第16章 …異変
「ゾーナ・プグナエは、その場にあるマグネタイト量が多い程、強い空間遮断力を発揮します。しかし、青い星の地表に存在するマグネタイトは、空気中に存在するものを含めて極めて薄いのです。その為、強い魔力を解放すれば魔力は領域の壁を突き抜け、他の敵に感知され易くなるのです」
「……なるほど、それでここで戦えってのか……」
死神の言葉に、剣豪の口端は自然と上がった。
仲間達を巻き込まず、自分の中に宿る強大な力を、敵に悟られずに思う存分振るう事が出来る領域。
その事実は、彼の闘争心を静かに奮い立たせた。
だが、同時に一つの疑念が過った。
「……でもよ、青い星には元々、大量のマグネタイトがある筈だろ。それが薄いってのはどう言う事だ」
「貴方様もご存知の通り、先代死皇帝・アポフィス様がマグネタイトを地下深くに封印された為、青い星の地表には殆ど存在しないのです」
死神は静かな口調で続ける。
「……そして影の星のマグネタイトは緑でも赤でもない……非常に特殊で希少な『黒いマグネタイト』……何れ現れるであろう、その力を独占せんとする者達から守る為の手段でした。そして近い将来、貴方様の手でその封印は解かれる事になりましょう」
「……黒いマグネタイト……」
「それは『ダーク・マグネタイト』と呼ばれるもの……死皇帝としての真の姿……その右上半身と左腕を覆う黒い結晶体こそが、それなのです」
黙して聴いているゾロの目が鋭さを増す。
「貴方様の肉体は、通常のそれとは比較にならぬ程のダーク・マグネタイトで構成されております。アポフィス様が玉砕された折、四散したそれは極めて密度と硬度の高い一つの塊となり……消滅する事なく、今の貴方様の『魂の核』となっているのです」
灰色の地面を見詰め、ゾロは黙したままだった。
己の魂……肉体そのものが、未知のマグネタイトの塊。
魔界での調査結果にも、そんな記述は一切なかった。
ゾロは舌打ちを一つすると、その視線を遠くに聳える色のない山々に移した。
「……ルシファーの野郎、また黙ってやがったな」
「貴方様の存在と機密を外敵から隠し通す為……念には念を入れての事。そしてこの真実を新しき主へお伝えする事こそ、永年先代に仕えた私めが、閣下より賜った役目にございます」