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魔王之死刀

第2章 ・血脈


 覇気と魔力を一気に使い戦った為か、流石のゾロも疲労困憊し、暫くその場に座り込んだままだった。
 それから数分後。
 やっと動ける様になった彼は、座り直し胡座を掻くと、ふうっと一つ、深い溜息を吐いてから、高く薄暗い天井に視線を遣った。
 そこを見詰める彼の頭の中に蘇ったのは、広大な砂漠と太陽のない壊れ掛けの球体が空に浮く、不思議な世界の景色だった。

「そう言えばよ……ここは何処なんだ?……地獄なのか?」

 ゾロの問いに、少年は微笑みながら首を横に振って答える。

「いいや、残念だが地獄ではないよ。ここは『ダアト』と呼ばれている、近年出来たばかりの『魔界』だ。魔界は、元々もう一つあってね……それで、ここは別名でダアトと呼ばれているんだよ」

「魔界……地獄じゃねえんだ……なあ、おれは……死んでんのか……?」

 ゾロは、少年に視線を移す。
 心の何処かで覚悟を決めつつ、そう訊いた。
 少年は、笑顔を湛えたままである。

「安心し給え、君は生きているよ。先程も言ったが、君を含め僕達魔神は魂を完全に消されない限り、死ぬ事はないんだ。不老不死の存在……それが僕達だ。魂があれば僕達魔神の肉体は、何度でも再生出来るんだよ。そして僕達の魂は、そう簡単に消える事はない」

「そ……そうなのか……そりゃ、良かったぜ……」

 少年の返答を聞いて、彼は拍子抜けしたかの様に、ふうっ、と大きな息を吐いた。
 何としても達成しなければならない事が、彼の心の中に湧き上がる。

(……例えこの体がぶっ壊れたとしても、また再生出来る……ルフィに万一の事があっても、この体を捨てて助ける事が出来るって事だ……何度でもな……)

 ゾロは一人、思わずほくそ笑んだが、しかし、彼は同時に少々違和感を覚えた。
 不老不死の身になったとは言え、彼自身、その実感が全く湧いて来ないのだ。
 彼は自身の体のあちこちに、視線を移して行く。
  
「……なんか、イマイチ信じられねえな……」

 体には、これと言った特に変化は見られない。
 ゾロは、右の掌で自分の頬を二回、ビシビシと強めに叩いてみる。
  
「……痛え……やっぱり、夢じゃねえ……」

 彼はそう呟いて、思わず苦笑いを浮かべた。
 少年はそんな彼に、称賛の言葉を口にする。
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