第1章 ・帰還
目を丸くするばかりのゾロに、少年は静かに頷いた。
ゾロは、自分自身に起こった出来事を頭の中で素早く整理しながら、またレギオンに向き直る。
(……呪いも吸収しちまう体か……おれは、本当に人間じゃなくなったって事だ……だが、それでいい……人間だろうが悪魔だろうが……ただおれは……最強を目指すだけだ!!)
彼は金色の瞳をギラ付かせながら、全速力でレギオンに突っ込んで行く。
敵の眼前でジャンプすると同時に、上半身を後方に反らせながら閻魔と鬼徹を左肩口に担ぐ様に構えると、それを勢い良く振り下ろし斬り掛かる。
「超・虎狩り!!」
三振りの刀がレギオンの表皮に食い込むが、深く斬り込む事が出来ない。
ゾロは、思わず叫んだ。
「か、硬てえっ!!!」
一瞬怯んだ隙を突き、レギオンは触手を尖らせて反撃を開始する。
ゾロは怯む事なく、敵の攻撃を刀で弾き飛ばして行った。
一見柔らかそうに見える触手も硬く、簡単に切り落とす事が出来ない。
「ちっ……!!」
彼は舌打ちを一つすると、十メートル程離れた所迄後退した。
ゾロの戦いを注視している少年の瞳が、一瞬妖しい輝きを放つ。
「……なるほど、並のレギオンではない様だね……デカラビア」
「ははっ!!」
主の無言の命令にデカラビアは即答すると、その大きな瞳をレギオンに向け、呪文を唱えた。
「……『アナライズ』……!!」
すると、デカラビアの目の前にレギオンの情報が文字となって浮き上がり、そこに敵の弱点も表示された。
しかしそれは、使用した者にしか見えない、何とも不思議な魔法だった。
星型の魔神は、即座にルシファーに敵の弱点を報告する。
「閣下、このレギオン……物理耐性はありますが、弱点は、やはりジオ系とハマ系です」
「うむ……デカラビア、大義である」
「ははっ」
デカラビアは恐縮し、星型の体を丸める様にして屈んだ。
その間にもレギオンは、次の攻撃に移ろうとしている。
しかし少年は相変わらず落ち着いた口調で、ゾロに敵の弱点を教えた。
「ゾロ、どうやらそいつは物理攻撃には少々耐性がある様だ。だが、魔法……特に雷に弱い。心の中に稲妻が相手に落雷するイメージを思い描き『ジオ』と唱えるんだ。呪文に思念を込める様に唱えて……やってみるといいよ」