第10章 ・対極
ゾロは苦笑しつつ、妖精が運んで来たコーヒーを口にした。
笑いが弾け、カフェの空気は一層明るくなる。
やがてカップの底が見えた頃、ロキが立ち上がった。
「Brother、そろそろ行くか。『本物』を撃ちによ!」
「行ってらっしゃい!!また来てね!!」
妖精達の声を背に、二人はコーヒーの香りが漂う店を出た。
次は火薬の匂いのするあの場所へ……。
「射撃場は近い。歩いて五分だ」
ロキの足取りは軽い。
一方、ゾロは周囲を見渡しながら無言で付いて行く。
そんな彼に、ロキは訊く。
「なぁBrother、撃った事ないんだろ?」
「ああ……銃は一発か二発、軽く撃った事がある位だ」
「じゃあ今日は、おれがちゃんと教えてやるよ」
ロキは笑って、片目を閉じた。
角を曲がると、白い建物が見えた。
重厚な金属の扉には『Tokyo Shooting Club』と文字が彫られてあった。
その下には『Private Use in the Morning』と書かれた金属製の看板がぶら下がっている。
「ここだ。オーナーはおれの友人さ。今日は昼迄、貸し切り状態って訳」
ロキが軽くカードキーを翳すと、電子音が鳴り、扉が開いた。
店内は無機質なコンクリートの壁に、銃器が整然と並んでいるラックがある。
鉄と火薬の匂いをゾロは無言で吸い込み、目を閉じる。
ロキはそんな彼を見て、笑みを浮かべた。
「いい顔してるな。お前、刃物より似合ってんじゃねえの?」
「刃物じゃねえ、刀だ」
ゾロは眉間に皺を寄せ、そう言った。
二人の声が、静かな射撃場に反響した。
トウキョウに実弾の撃てる射撃場が出来たのは、魔神族との戦いの最中。
それ迄、この国では一般の国民が実弾を撃てる店はなかった。
相変わらず銃は購入する事は出来ないが、有事に備え、大人であれば誰でも撃つ事が出来る様になったのだ。
黒い壁に、拳銃やライフルが見栄え良く飾られている。
戦いの幕が開くかの様な雰囲気に、ゾロの心は躍った。
彼の脳裏に、一味の狙撃手であるウソップの顔が浮かぶ。
(……凄え銃ばっかりだ……何時かウソップも、連れて来てえな……)
防音用のイヤーマフとゴーグルを装着すると、ロキはラックの前に立ち、銃を三丁選び出した。