第10章 ・対極
異世界の街の空気は、まだ何処か落ち着かない。
そんな彼に、ロキが言う。
「これからBrotherを……射撃場に連れて行ってやろうと思ってるんだけどよ、まだ時間があるから、カフェに行こうぜ」
「……カフェ?」
ゾロは眉間に皺を寄せ、ロキを一瞥する。
その冴えない表情に、ロキは半ば呆れた様に肩を竦めた。
「なんだよBrother、カフェに行った事ねえのか?」
「……おれは、カフェより居酒屋に行きてえ……」
「Brother、気持ちは判るけどよ……まだ朝だぜ。夜になったらいい所に連れてってやるからよ、それ迄我慢しな」
ロキは笑いながら、通りを歩き出した。
ゾロは少し遅れて彼を追う。
人々の声を行き過ぎ、通りの角を左に曲がる。
「……さて、ここがおれの行き付けのカフェ『Fairy Time』だ」
ロキはそう言いつつ、扉を開ける。
すると、ベルの代わりに小さな妖精達が笑顔で出迎えた。
「ロキ、お帰り!!」
店内では、南瓜姿の妖精ジャック・ランタンがミルクフォームを泡立てていた。
オレンジ色の炎の光が、カップに映える。
青いレオタードに身を包んだ、小さな妖精ピクシーが、宙を舞いながらロキに訊く。
「ロキさん、今日もカッコいいー! !あれ、一緒のお兄さんは……新しいお友達?」
「Yeah、そうさ!!紹介するよ……おれの新しいBrother……ロロノア・ゾロだ」
店内にいる皆の視線が、一斉にゾロに集まる。
彼は仰け反りつつ、ぎこちない挨拶をする。
「……よ、宜しく……」
「Hey, Brother!!Breakfastはまだだったよな。トーストと……コーヒーはブレンドでOK?」
聞かれたゾロは無言で頷くと、ロキは指を鳴らし、店員の妖精に声を掛ける。
そんな彼の姿に、店内は人間、魔神族関係なく、黄色い声が飛び交った。
その様子にゾロは呆れつつ、呟く様に言う。
「……モテる奴は、朝から忙しいな」
「人気商売だからな、イメージ管理も仕事のうちさ」
「人気商売?お前……商売なんてやってんのか?」
「ああ、言ってなかったか……おれは、ロックバンドのボーカルやってんだよ。自分で言うのも何だが……魔界だけでなく、こっちの世界でも、人気はそこそこあるんだぜ」
「ああ……道理で……そんなノリな訳だ」