第10章 ・対極
ナアマとサマエルの言葉が、ふと、脳裏を過る。
(……愛する事も、強さ……)
あの言葉だけが、何故か頭から離れなかった。
暫くすると扉の向こうから、軽やかなリズムを刻むブーツの音が、微かに聞こえて来た。
ドアをノックする音が三回、ゾロの耳に届く。
(……来たか)
ゾロは腰を上げ、三振りの刀を右腰に差し、ドアへと向かった。
二重扉の外側のドアを開ける。
すると……。
「Yo, Good Morning!!アンタが、ロロノア・ゾロ……だな?」
そこに立っていたのは、金色の長髪と、背中から生える黒い羽が印象的な男だった。
細身の体に胸元の開いた紫のレザースーツ。
銀のネックレスが胸元でキラリと光った。
その後ろに、何時もの様に少年の姿をしたルシファーが見える。
「おはよう、ゾロ。昨夜はよく眠れたかい?」
「ああ、お陰さんでな……ちょっと早起きし過ぎちまったけど」
ゾロは苦笑しながら、二人を部屋に迎え入れる。
ルシファーは早速、連れて来た案内役を紹介した。
「ゾロ、紹介するよ。彼は、北欧を守護する魔王……『ロキ』だ」
金髪の男……ロキは、軽い調子で笑いながら手を差し出す。
「改めまして……おれはロキ。ルシファー様からのご指名で、あんたの案内役に抜擢された……昨日は挨拶出来ず仕舞いだったが、お会い出来て光栄だ。コンゴトモ、ヨロシク……二代目死皇帝さん」
ゾロは握手を交わし、目の前の男を一瞥する。
軽薄に見えるが、その瞳の奥には、情熱と冷静さが見え隠れしている。
少し気弱な自信家……ノリは軽いが、強い魔力を秘めた魔王。
(……なるほど、ただの遊び人じゃねえって訳か……)
ゾロの本能が、そう告げる。
「……おう、おれの方こそ、朝早くから悪りぃな。コンゴトモ、ヨロシク、な」
「肩の力抜けよ、Brother!今日は『トウキョウ』に行くんだぜ?楽しい所に案内してやるからよ!!」
ルシファーが静かに微笑んだ。
「ゾロ、トウキョウは君の世界にはないものが沢山ある賑やかな街だ。明日の夜迄、目一杯楽しんで来るといいよ」
そう言って、ルシファーは黒革の長財布を一つ、手渡した。
中には、札束が一束。
ゾロは目を見開き、彼に言う。
「お前、これって……」