第1章 ・帰還
「……ルフィを……うちの船長を殺るだと?……例え相手が……くいな、お前でも……うちの船長だけは……ルフィだけは、絶対に殺らせねえっ!!!」
ゾロは屈する事なく、怨霊と化した彼女を鬼の様な形相で睨み付けた。
床に置かれた三振りの刀を手に取ると、気力を振り絞り力強く立ち上がる。
刀を右腰に装備し、素早く鞘から抜くと、和同一文字の刀身が自身の左側に来る様にその柄を口に咥え、右手に妖刀閻魔、左手に妖刀三代鬼徹を握る。
(くいな……こんな怨霊になっちまうなんて、よっぽど死んだ事が悔しかったんだな……お前より弱いおれが、この和同一文字を持ってるって事が、許せねえんだな……!!)
ゾロは、心の中で哀しく呟く。
だが、その哀しみはすぐに怒りに変わった。
彼の右目が赤く変色して行く。
その両腕は黒く硬化、体は一瞬金緑色に輝き、そして赤と黒の稲妻の様なオーラが現れる。
武装色の覇気と、覇王色の覇気。
それは、本物の強者だけが習得出来るものである。
怨霊と化したくいなは、そんな彼の眼前にまで迫った。
「くいな……悪りいな……おれはともかく、うちの船長だけは殺らせる訳にゃ行かねえんだよ……!!このおれが、お前を楽にしてやる……もう二度と苦しまなくていい様に、誰も恨まなくていい様にな!!!……三刀流奥義……!!!」
黒い塊がゾロの体を飲み込むかの様に、大きく広がる。
だが彼は微動だにせず、左右の腕を前に突き出し、二振りの刀を高速で回転させ、奥義を繰り出す。
「一大・三千・大千・世界!!!」
掛け声と共に、彼は怨霊に向かって突進する。
ゾロが怨霊の中心を突っ切ると、その黒い塊は一瞬で四散した。
耳を塞ぎたくなる様な叫び声が、辺りに響く。
彼は振り向くと、散り散りになった怨霊に目を遣った。
あちこちに散らばった黒い塊が、不気味に蠢いている。
それは今にも復活する様な状態だった。
彼は和同一文字をその口から外すと、舌打ちを一つする。
「ちっ、まだ……足りねえか……!!」
「ゾロ、覇気と一緒に、魔力を刀に込めて斬るんだ」
ゾロは思わず、少年の顔を見る。
相変わらず落ち着いた体で助言をする少年に、彼は苛立ちを顕にする。
「あ……あァ!!?ま、魔力って……どうやってやんだよ!!おれはまだ、そんなもん使えねえんだぜ!!」