第1章 ・帰還
(お前……弱いくせに……大剣豪になれる訳がない……あいつを、弱いお前が海賊王になんか出来る訳ないんだ……私が死んでお前が生きてるなんて……強いのは私だ……私が……私ガ……ワタシガイチバンツヨインダアァァァ!!)
彼女の憎悪の念が、否応なしにゾロを直撃する。
それは彼が、今迄受けた事のない、強烈な『呪い』であった。
一瞬、目の前が真っ暗になる。
彼女のぐちゃぐちゃになった黒い感情の塊が、ゾロを狂気の世界に引き摺り込もうとする。
彼は、正気を保つのが精一杯だった。
少年が、再び口を開く。
「ゾロ、流石に精神は奪われていない様だね……君も気付いている筈だろう。くいな……いや、その怨霊に話し掛けても……もう通じないと言う事を」
ゾロは目を見開き、悔しさの余り、歯を食い縛る。
「判ってる……そんな事判ってんだ……こいつは、くいなだけど……もうくいなじゃねえ……そんな事位、判ってる……!!!」
ゾロは自分に言い聞かせる様に、そう答える。
しかし彼は、この怨霊を責める事が出来ずにいた。
自責の念に襲われ、立ち上がる事も出来ない。
(……成仏してると思ってた……勝手にそう思ってた……くいながこんな姿に……おれは、おれは今まで一体……何をして来たんだ……おれの……せいだ……)
だが、強烈な怨念の塊と化した彼女は無情にも、彼に向かって突進して行く。
(シネ!!シネ!!オマエモ、オマエノナカマモ、オマエノセンチョウモ……ミンナミンナ……シネバイイ!!!ワタシト……オナジメニアエバイイ……シネ!!シネ!!ミンナミンナ、コロシテヤル!!!)
彼女は殺意の思念と共に、呪いの言葉をゾロにぶつけた。
ルフィや仲間達に対する殺意が、彼の心に強烈に伝わって行く。
殺意に満ち溢れた彼女の強い思念が、彼の中で視覚化される。
バラバラに斬り裂かれた仲間達の体。
彼等の血で、真っ赤に染まって行く海。
その凄惨な場面がゾロの目の前に広がったその時、彼の中の何かが、ブツン、と切れた。
(……おれが、ここで殺られちまったら……ルフィが……あいつ等が殺られちまう……!!)
ゾロは、ルフィや仲間まで巻き添えにしようとする彼女に対し、彼は激昂した。
彼の目は血走り、殺気立つ。