第10章 ・対極
しかも、しっかりフィットして戦い易いと言う理由で愛用している、スポーツ用上向きタイプの下着がしっかりチョイスされているのだ。
ゾロは一瞬考え、思い出す。
(そうだ……あいつ、おれが着替えてるとこ、見てやがったんだった……)
そこ迄見ていたと言う事実。
余りの寒気に、一瞬体がブルっと震える。
ゾロは気を取り直し、彼が仕立てた服に袖を通した。
左胸に逆五芒星のワンポイントが入っている半袖のダークブルーのTシャツに、黒い生地のジーンズ、白い靴下、
黒地に白のラインが三本入ったスニーカーに、その身を包んだ。
地球にある国のブランドなのだろう、スニーカーには『SUPERSTAR』と言う文字が入っている。
普段は戦闘に備えてダッフルコートに似た着流しを着ているゾロである。
こんなカジュアルな服装は久し振りだ。
(たまにこう言うのもいいな……なんか、凄え休んでるって感じがする)
ゾロはソファーに腰掛けながら、ふと、仲間達の事を思い出す。
(そう言えばあいつ等、どうしてるかな……ルシファーが伝えてくれてるから、まあ心配はしてねえだろ……おれはおれで、明後日迄羽を伸ばすか……)
その時、ドアをノックする音がゾロの耳に届いた。
ドアの向こうから、ヒーホー君の声が聞こえる。
「ゾロ様、お食事を持って来たホー」
「おう、悪りぃな……ありがとう」
ゾロがヒーホー君を部屋に通す。 雪の妖精は、テーブルの上に食事と酒を手際良く並べて行った。
「食べ終わった食器は、お手数ですがこのワゴンに入れて、廊下に置いてホー。ごゆっくりホー」
ヒーホー君は、くるりとその場で一回転して右手を上げてから、部屋を出て行った。
その後、食事を終えたゾロは、独り酒を楽しんだ。
静まり返った部屋の中で聞こえるのは、ウイスキーをグラスに注ぐ音と、氷がグラスにぶつかる音だけだ。
(腹は一杯になったが……なんか物足りねえな……)
ゾロの胸に、ふと、仲間達の顔が浮かぶ。
(そうか、あいつ等いねえからな……物足りねえのは、そのせいか)
彼は独り、苦笑する。
普段、一味がどれだけ騒がしいのか、改めて感じた。
別に寂しい訳ではない。
ただ、少し静か過ぎるだけだ。
それだけ今迄、仲間と共に充実した日々を送って来た、と言う事なのだろう。