第10章 ・対極
青白い光が、とある場所で放たれる。
ゾロとヒーホー君は、一瞬でロイヤルルームのドア前に姿を現した。
「着いたホー、ここがゾロ様のお部屋ホー!」
ヒーホー君は軽やかにドアノブを回し、部屋の中へと案内する。
二重扉を抜けると、正面の壁には真魔界の山々を描いた壮大な絵画が飾られており、その右側から広間へと入る形になっていた。
部屋には白く大きなソファーや一人掛けの椅子、観葉植物が整然と置かれ、淡い照明が金の縁飾りを優しく照らしていた。
開放的な大窓の外には、真魔界の城下町と、遥か向こうへと連なる山脈が見える。
隣の部屋を覗くと、キングサイズのベッドが一つ。
クローゼットには白いバスタオルやバスローブが整然と置かれていた。
ダアトからルシファーが持って来たであろう、黒いボストンバッグも置いてある。
どう見ても、独りには広過ぎる空間だ。
ゾロは部屋のあちこちに目を移しながら窓辺へ歩み寄ると、外の光景を見下ろした。
足元の絨毯が、やけに柔らかい。
「……すっげえ部屋だなおい……アラバスタ宮殿以上の豪華さだな。なんか、落ち着かねえなあ……」
胸の奥に、嘗て一晩だけ世話になった、アラバスタ宮殿を思い出す。
「……やっぱり、城とか……おれには性に合わねえな……」
苦笑するゾロに、ヒーホー君は明るく笑う。
「大魔王城は閣下のご自慢のお城なんだホー。ここは、お客様用の部屋だから豪華なんだホー」
「……ルシファーの自慢の城か……そう言う割には、あいつ、あんまり帰って来てねえみたいじゃねえか」
「閣下はお散歩の旅が大好きなんだホー。色んな星に行って、色んな星のニンゲンや生き物を観察するのが、好きなんだホー」
「へえ……あいつ、人間好きなのか……まあ、あいつらしいって言えば、あいつらしいか」
ゾロの言葉に、ヒーホー君はまた、楽しそうに笑う。
「では、夕食は十八時にお運びするホー。それ迄、どうぞごゆっくりなんだホー」
ヒーホー君はそう言うと、またくるりとその場で一回転して、部屋を出て行った。
ドアの音が消えると、部屋は一気に静寂に包まれた。
ゾロは窓際の椅子に腰掛けると、暫く窓の外をぼんやりと眺めていた。
真魔界の薄紫色の空が、懐かしい。
(……そう言えば、まだ魂だったおれがここに来たのは、何時の時代だったんだろうな……)