第9章 ・宿命
その蛇は、レギオンとの戦いで見た、あの黒い大蛇と同じ姿をしていた。
(この蛇が……そうか……)
ゾロは一瞬目を閉じ、タリスマンをポケットに入れると、ルシファーに視線を移した。
彼と視線が合ったルシファーは、頷く。
「そのタリスマンは、破魔系の攻撃魔法も防いでくれる。そして、君の刀と同じく、持ち主から離れる事は決してない」
ゾロは、右腰に帯刀している三振りの刀に目を遣った。
彼の大切な分身であり相棒……その三振りの刀は、主が自分達を鞘から抜く時を、今か今かと待っている様に見える。
ルシファーは、続ける。
「マリージョア襲撃と虚の玉座の破壊は『刻』が来たら、決行してくれ。『刻』が来たら、君ならすぐに判る筈だ」
「刻が来たら……か……そうか、時間が掛かってもいいって言ってたのは、そう言う意味か」
ルシファーが静かに頷く。
大広間を照らす蝋燭の炎が、ゆっくりと揺れた。
「実は、マリージョアにも数名の者達を潜入させていてね。世界政府の連中に途中で発見された様だが、幸い、我々の存在は知られていない。街の構造、城の位置、一部の内部構造の情報は得られている」
「そうなのか、凄え優秀な部隊だな……」
「君が青い星に戻った時、その部隊員の一名が報告する手筈になっているんだ……極秘資料もその者が所持している。必ず、それを受け取ってくれ。マリージョアへの侵攻、虚の玉座の破壊方法の手段は選ばない……頼んだよ」
「おう、任せとけ」
ゾロの瞳が静かに燃え上がる。
頼もしい言葉に、その場にいる者達は微笑んだ。
沈黙の中に、彼等の決意が込められる。
……この後、大広間の扉は重々しく閉じられた。
ライドウとゴウトは自分達の世界……過去のトウキョウ、帝都へ。
ナホビノはトウキョウ、人修羅はダアトへと、それぞれ帰還して行った。
ゾロは大魔王と共に、広い廊下に出ると、背広を脱ぎ、ネクタイを外すと深く息を吐いた。
「……いやしかしよ……会議って体動かせねえから、本当疲れるな。お前、こんな事しょっちゅうやってんのか?」
「……正直、僕も会議は嫌いなんだけどね。魔王族の会議は半年に一回だけど……他にもあるから……二か月に一度位、かな……」
「そんなにあんのかよ……お前も大変だなあ、おい」
ゾロは呆れた様に眉を顰め、ルシファーは肩を竦めて苦笑する。
