第9章 ・宿命
その宣告と共に、魔王達の間に高揚した空気が漂う。
だが何故か、ゾロの胸の内は静かだった。
ゆっくりと顔を上げたゾロの瞳には、迷いも恐れもなかった。
(何があっても、何が起こっても……おれは迷わねえ……恐れる事も迷う事も、何一つねえんだ)
その目にはただ、強い意思だけが宿っている。
そして大魔王は、彼の名を呼んだ。
「……ゾロよ……」
彼はゾロに視線を移し、静かに、しかし威厳のある声で命じた。
「死皇帝ロロノア・ゾロよ……その場に、起立せよ」
穏やかで明るかった大魔王の口調が、重厚ある声色に変わった。
ゾロは、すぐに理解した。
これから何が起こるのかを。
彼は立ち上がり、大魔王を真っ直ぐに見据える。
「魔王……死皇帝ロロノア・ゾロ……汝に命ずる」
大魔王ルシファーの声が、大広間に響き渡る。
誰もが息を止め、その瞬間を見守っている。
二言目に大魔王が放った言葉……それは。
「……影の星を、奪還せよ……!!!」
その言葉に、大広間の空気が一気に変わった。
その場にいる仲魔達の士気が、静かに上がる。
しかしゾロは心静かに、大魔王からの更なる指示を待つ。
「……影の星……現在の青い星……マリージョアはパンゲア城に存在する『虚の玉座』を、破壊せよ……!!!」
大魔王の言葉に、ゾロの瞳が静かに光を帯びる。
その光は、破滅を齎す闇の光であった。
虚の玉座……青い星に於ける各国の平等を表した象徴であり、この玉座に座る事を許された王は存在しない。
だがそれは、真実ではない。
世界政府が隠蔽している事案の一つであり、それを知った者は抹殺される程の、重大な機密事項……。
「そして……」
大魔王の瞳には、もはや慈悲も情もない。
だがゾロもまた、凍る様な眼差しで、彼を見ていた。
次に下る命が何であるか……彼は、判っていた。
「……星を我が物顔で蝕む者共を、四文字の神の残党を、一人残らず滅するのだ。時間は問わぬ……奴等を、粛清せよ……!!!」
その声が大広間に響いた瞬間、空気が更に張り詰めた。
魔王族達は沈黙のまま一斉に頭を下げ、その言葉をしかと受け止める。
ゾロの胸の奥で、心臓が強く鼓動する。
(……これが、おれの『道』だ……)
ルシファーの声が、静かに続く。