第9章 ・宿命
ゾロは、その顔を強張らせていた。
青い星……それは彼が生まれた世界。
仲間達がいる、あの大海原のある星。
(……まさか、おれの故郷の星が……死皇帝の生誕の地だって……?ま、マジかよ……)
彼は、静かに視線を落とす。
胸中にある思いが、その口を突いて出る。
「……これが運命……いや、宿命ってヤツなのか……」
大魔王は、静かにゾロへと視線を移す。
その金と銀の美しいオッドアイは、遠くで輝く星々の様に美しく、しかし、鋭い光を放っていた。
「……ゾロ……もう判ったね……君の生まれ育った青い星は、嘗ては影の星……前死皇帝アポフィスの生まれた星でもある……」
円卓に座する魔王族達は、息を飲みつつ、大魔王の話に耳を傾け続けた。
前死皇帝アポフィスと、その力の魂を受け継いだロロノア・ゾロ。
その彼等が、時は違えど、同じ星で生まれた存在だったのだ。
彼等が引き合い合一魂となったのは、やはり宿命だったのか。
ゾロは視線を落としたまま、大魔王の話を黙して聞き続ける。
「影の星は、太古の昔……原始宇宙から存在している謎多き星だ。永きに渡り他の星に寄り添い、そしてまた旅をする……その名の通り、影の様な存在の惑星だった」
大魔王の言葉が、淀みのない川の様に、ゆっくりと流れて行く。
誰もが息を潜め、ただその語りを聞いている。
「生まれた時から強大な闇の力を持っていたアポフィスは、時空を超えて我々の住む天界にやって来た。それと同時に、影の星は地球の裏側の時空に近付き、それ以来、地球の影の様な星になった……」
ゾロは、円卓の中心に浮かぶ巨大なホログラムへと視線を向ける。
二つの光点……青い地球と、その裏に寄り添う漆黒の影の星。
それはまるで、宿命の下に生きる双星の様であった。
「その影の星に、アポフィスの配下や親しい神々が降りて行き、太陽や月が作られ、遂に、地球に良く似た惑星となったのだ」
大魔王のその声には、星に降り立った彼等への敬意が込められていた。
だがそれは徐々に、怒りが入り混じった声色に変わって行った。
「……その青い星……影の星に、我が友が玉砕した事をいい事に、四文字の神の手下共が侵入し、図々しくも星を我が物にせんとしている……その残党を一掃する……遂に、その刻が来たのだ……!!!」