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魔王之死刀

第8章 ・記憶


『念は強力になれば、それ相応の事象を引き起こす一因になる……因果応報だね。本当に面白く、興味深い事象だよ』

 ゾロは目を伏せ、納得した様に頷き、その心の中で独り呟く。

(……ルシファーの言う通りだ……今のこのおれがあるのは、おれ自身の念で強力な力を引き寄せた結果……良くも悪くも……それが『おれ』なんだ……)
 
 その時、大広間の大きな扉が開いた。
 扉の軋んだ音が響き、大広間を照らす蝋燭の炎が揺れる。
 そこから、ルキフグスの元に足早に駆け寄って行く若武者の姿があった。

「おお、ヨシツネではないか……もしや、お越しになられたか?」

「ははっ……仰せの通り、只今、ベルゼブブ様と共に到着致しました。尚、ベルゼブブ様は明星の庭にて、待機しておられます」

「うむ、ヨシツネ、報告ご苦労である……閣下」

 ルキフグスの声に、ルシファーは無言で頷くと『ヨシツネ』と呼ばれた若武者も無言で頷いて、また足早に大広間を出て行った。
 その場にいる仲魔達がざわめき始め、開いた扉の向こうに視線が集中する。
 ルシファーが、大広間にいる仲魔達に、静かに告げる。

「今し方、サマエル公とその奥方……カディシュトゥの皆が到着した。彼等が来てから、話の続きをしようと思う」

「おお、サマエル公と奥方様達が……」

 大広間にそんな声が上がる中、ヨシツネに案内された魔王が姿を現す。
 ゾロの瞳にその姿が映り込むと、思わずその目を見開いた。

(……十二枚の羽……四つ目の紅い蛇……間違いない、こいつだ……!!!)

 それは『サマエル』と言う名の魔王……ゾロが最初の変異時に見た、紅い蛇であった。
 ゾロの先祖と交わった魔王。
 彼が生まれる切っ掛けとなった、巨大な紅い蛇。
 ゾロは思わず、息を飲む。
 ルシファーは上座から、紅い蛇の魔王に声を掛けた。

「サマエル公、その妻達であるカディシュトゥの皆……久し振りだね。元気そうで何よりだ。さあ、どうぞこちらへ……」

 ルシファーは右の掌を上に向け、ゾロの隣の席を指し示した。
 その仕草に応じて、サマエルが歩みを進める。
 彼の背後には、四名の女魔……『カディシュトゥ』と呼ばれる妻達が静かに続いた。
 先頭を行くのは第一夫人『リリス』。
 波打つピンク色の長髪、半裸の肢体が妖しく輝く。
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