第7章 ・死皇帝
「我が友、ルシファーよ……おれは、自由を奪ったあいつを許さぬ。今、この身の全ての力を持って奴に突撃し、魂に致命の傷を刻む。おれの魂は砕け散り、地の底へ堕ちるだろう…… だが、その後、おれの魂の欠片を集めてくれ。記憶は消えようとも『刻』が来れば、必ず蘇る。 信じて待て、我が友よ……必ず、奴を倒し、自由を取り戻せ。後は……頼んだぞ」
その言葉の後、死皇帝は全身全霊の力を解き放ち、四文字の神へと突撃した。
その瞬間……天地は震え、太陽は暗黒に染まり、光は掻き消えた。
地は裂け、海は荒れ狂い、嵐が空を裂き、白い雲は消え失せた。
……死皇帝は、玉砕した。
……死皇帝の言葉通り、魂は砕け散り、地の底へ堕ちた。
だが、四文字の神の魂にも癒えぬ傷が残り、そこから死皇帝の呪怨が流れ込んだ。
その呪いは、神を蝕んだ。
死皇帝だけではない。
悪魔に貶められた神々の、そして、その神々を信仰していたニンゲン達の呪怨……それは、神を蝕んだ。
………狂気と腐敗。
神の狂気は地上へと波及し、広がり、聖職者達は堕落した。
信仰を掲げながら、戦を起こし、街を滅ぼし、罪なき者を裁いた。
やがて政治も腐敗し、世界は混沌と憎悪に満ちて行った。
死皇帝の呪いにより……四文字の神は、ニンゲンからの信仰を失い、力をも失って行った。
……地の底に堕ちたルシファーは、大魔王として君臨し、その地を『魔界』と呼んだ。
彼は死皇帝の言葉通り、砕けた魂の欠片を一つ残らず集めた。
そして『魂の片割れ』を創り出した。
……何時の日か、友が再び蘇る、その『刻』の為に。
……やがて、四文字の神との戦いが、再び始まった。
死皇帝の呪いが蝕む、その傷を狙う。
ルシファーの軍勢は、その傷目掛けて、怒涛の攻撃を開始した。
傷は更に大きく、深くなって行く。
そして、神の魂は裂け、大魔王は四文字の神の知恵を喰らい、遂に消滅した。
大魔王ルシファーとそれに従った者達は、永い戦いの末、遂に勝利し、再び自由を得た。
……死皇帝。
その名を『アポフィス』と言う。
……彼は、原初の闇より生まれ、死と闇を、統べる者である……