第7章 ・死皇帝
この城の外に出れば、真魔界の景色が広がっているのだ。
一目見れば、恐らく『ここだ』と思うに違いない。
彼は、確信した。
(……やっぱり、おれは……戻って来たんだ……
しかし、彼の心の片隅には、様々な疑問が浮かんでいた。
(って事は……おれは……ずっと昔から、人間じゃなかったって事か……?)
皆揃って、感極まって泣いている。
ゾロは、悪魔と人間の混血で、魔王の血を引いている……彼の他には存在しない存在だ。
しかし、それにしては、である。
(……理由は、それだけじゃねえ筈だ……)
ゾロは、隣で起立し話を続けているルシファーを見上げた。
皆の様子を見ている大魔王は、満面の笑みを浮かべている。
ゾロは、彼が『ルイ・サイファー』と名乗った時の事を、ふと思い出した。
(ルイ・サイファー……何処かで聞いた事がある名前だと思っていたが……もしかして、ずっと昔から名乗っていたのか……?だとしたら、おれは、その時から生きていたのか……?)
彼の頭の中が、徐々に混乱して行く。
どう記憶を掘り返しても、『ロロノア・ゾロ』として、二十一年間、生きて来た記憶しかない。
その時彼は、ある言葉を思い出した。
『魂の片割れ』
ゾロが真の姿に変異した時に、ルシファーが口にした言葉である。
(死皇帝……おれの、魂の片割れ……あの時確かにそう言っていた。じゃあ、おれの魂は……おれじゃないって事なのか?)
大魔王を見詰めるゾロの表情が険しくなったその時、ルシファーは無言で右手を上げ、その場を静めた。
そして、ゾロに視線を移すと、静かな口調で話し始めた。
「ロロノア・ゾロ……君はあくまでも『ロロノア・ゾロ』だ……嘗て君は、どの世界にも生まれて来る事のない『呪われた弱き魂』だった。力を望んだ君の魂と、復活を望んだ我が親友……死皇帝の魂が合一した存在……それが、ロロノア・ゾロ……君なんだよ」
その言葉に、ゾロは思わず大きく目を見開く。
「……お、おれが……呪われた魂……だって……?」
ゾロの声が、震えた。
だがそれは、恐怖からではない。
『呪い』……その言葉で、彼の血が一瞬、騒いだのだ。
だが、ルシファーは黙ってゾロの顔を見詰めるだけであった。
その場に集っている仲魔達は、涙を拭きつつ、その様子を黙して見守っている。