第7章 ・死皇帝
大魔王ルシファー……少年の姿を取りながらも、その静かな威圧感に、誰もが息を飲む。
「うん、それでは……まず、ここに集まってくれた同族、そして仲魔達に日頃からの感謝を。本日は我等、魔王族の他に、各国を治める魔神の皆にも集まって頂いた。サマエル公と、その妻達……カディシュトゥは少し遅れて来る事になっている」
穏やかで、しかし凛とした響きのある声が、円卓を包み込んで行く。
静寂の中、重厚な椅子が軋む音が、微かに響く。
だが、誰も口は開かず。
その静寂の中、大魔王の声だけが静かに響く。
「それから、ニンゲン界からの代表として、僕の友でもある『十四代目葛葉ライドウ』と『業斗童子』にも来て貰っている」
ルシファーが緩やかに右手を差し向ける。
その視線の先。
壁際の席に座っていた男が、静かに立ち上がる。
学生帽の鍔に指先を添え、浅く一礼をした。
歳は十代後半位。
黒い学ランに黒いマントを羽織った、まだ若い男である。
しかし、その鋭い瞳は年相応のそれではない。
その一礼には、人間としての礼節と、この場に並び立つ覚悟が表れていた。
ゾロはそんな彼を、黙って見詰めている。
そんな男が羽織っているマントの裾から、一振りの刀の鞘が顔を覗かせている事に、彼は気付いた。
ゾロの眼光が、一瞬鋭さを増す。
(妖刀か……なるほどな、ルシファーが『友」と呼ぶ訳だ……)
ゾロは独り納得しつつ、その男の足元に目を遣ると、そこには先程の黒猫の姿があった。
黒猫とゾロの視線が、また合った。
黒猫が、可愛らしい小さな鳴き声を一つ上げる。
その鳴き声を聞いたゾロは、ニヤリと笑って、返してやった。
彼の隣では、大魔王が堂々とした体で話を続けている。
「……さて、今日の議題は他でもない、皆も知っていると思うが、僕の隣にいる同族であり仲魔……ロロノア・ゾロの件だ。彼こそ紛れもなく、かの死皇帝である。先日、無事に復活した事を、ここに宣言しよう」
「おお、やはり……この者が……!!」
「死皇帝が戻って来られた!!!」
魔王達は、一斉に歓喜の声を上げた。
感極まってその目に涙を浮かべている者もいる。
余りにも大仰な皆の反応に、ゾロは思わず後ろに仰け反った。
だが彼は、ふと思い出した。
オセも同じ様に、感極まって泣いていたのだ。