第1章 ・帰還
「……そうか。やはり君は心底から、いや、魂の底からそれを望んでいる様だね。正直で大変喜ばしい事だ。本当に気に入ったよ。常に、自分の心に正直な者よ……」
少年はそう言い、また不敵な笑みを浮かべる。
それは美しくも、妖しい笑みであった。
(ああ……こいつは、もしかして……)
ゾロは直感で、少年が何者なのか、何となく判った様な気がした。
「それでは君の中に眠っている『魔力』を解放するとしようか。だが、その前に……一つやらなければならない事がある……」
少年はそう言うや否や、何故か突然真顔になったので、ゾロも怪訝な表情に変わった。
「な、何だよ……急に真顔になりやがって……まだなんかあんのか」
「実はね……もう一つ、覚悟を決めて欲しい事があるんだ」
「ああ?何だよそりゃ。勿体振らねえでさっさと教えろ」
彼は苛ついた口調でそう言うと、少年に鋭い視線を向けた。
ゾロは時折、短気な面を見せる事があった。
少年は苦笑しつつ、しかし丁寧に答える。
「……力の解放には、ある者の魂を消さねばならない……果たして君に、それが出来るかどうか……」
「ある者の魂……?誰だそりゃ……」
眉を顰めるゾロに、少年は鋭い視線を向け、口を開く。
「……君が『親友』と呼ぶ者の魂だ」
「し、親友?……ま、まさか……」
聞いたゾロは、一瞬言葉を詰まらせる。
そして同時に、彼は背後から、得体の知れない不気味な気配を感じ取った。