第1章 ・帰還
(もし……もし本当に、おれの体にそんな力が眠ってるなら……あいつを海賊王にする為には……今、おれに必要なのは、強さ……力だ!!)
更なる強さを求める事、世界一の最強の大剣豪になる事。
ゾロが最も信頼する男を海賊王にする為には、必要不可欠な目標であり、常に心底から欲しているものである。
(……このままだったら……おれは、この先勝てねえ……おれは、まだまだ強くなれる……強くならなきゃならねえんだ!!)
彼はそう心の中で独り言を呟くと、今度は少年に向かって、はっきりと答えた。
「……このおれに、本当にそんな凄え力が眠ってるなら……その力を叩き起こす方法を教えてくれ。おれは、もっともっと……強くなりてえんだ」
殺気を帯びた鋭い眼光を、ゾロは少年にぶつける。
彼の決意を感じた少年は満足そうに頷くと、また彼に問い掛けた。
「……そうか。ではもう一つ……ニンゲンでなくなっても、その覚醒していない力……『魔力』を目覚めさせたいかい?人知を遥かに超えた魔力を覚醒させると言う事は、君は僕達と同じ魔神……君の世界で言う悪魔……僕達の『仲魔』になる、と言う事だ。その覚悟は……君にあるかな?」
そう問い掛けられたゾロは、心の中で一人呟いた。
(悪魔……魔神……おれは、生まれ付きその血を引いている……上等じゃねえか……!!)
ゾロは、自分の身に起こっている事をやっと理解し、それを受け入れた。
彼は元々、男だろうが女だろうが、どんな種族であろうが、それを理由に強いだの弱いだのと言い訳をする事が大嫌いな男であった。
そして彼自身、自分が人間であろうがなかろうが、そんな事もどうでも良くなっていた。
ただただ、誰よりも強くなる事。
世界一の大剣豪になる事。
それだけであった。
真っ直ぐな視線を少年に向け、彼は即答する。
「……面白えじゃねえか。おれは、元々そう言う血を引いてんだろ?……なってやろうじゃねえか、悪魔にでも魔神にでもよ!!」
彼の言葉に嘘偽りはなかった。
右目を大きく見開き、不敵な笑みを浮かべる彼の表情は、悪魔そのものである。
ただひたすらに強さと力を求める彼の返答に、少年は心から喜んだ。