第7章 ・死皇帝
(……初めて来た場所なのに、見覚えがある……懐かしい様な……なんでだ……?)
彼はそう思いつつ、視線を様々な場所へ移して行った。
部屋の隅には大広間の護衛隊……総勢二十名が、壁を背に整列している。
骸骨の姿をした兵士『トゥルダク』や、頭部に一本の角を生やした赤い肌の『オニ』……そして白い衣装を身を包み、槍を携えた長髪の美丈夫が一名、堂々とした体で控えている。
部屋の中央に視線を遣ると、そこに大きな円卓が一つ置かれていた。
その傍で数名の魔王族達が、楽しそうに談笑する姿が見える。
「あいつ等が……魔王族か……」
ゾロの小さな呟きに、ルシファーが答える。
「気が付いたみたいだね、ゾロ。その通り……彼等は僕達と同じ魔王族だよ。会議が始まる迄、まだ時間があるし、軽く挨拶しておこうか」
「え?ああ、そうだな」
ゾロはそう返事をしつつ、その視線は円卓に数名着席している者の中で、一際大きな魔王に向いていた。
上半身は梟、血の様に赤く染まった両腕、体は大蛇と言う、悍ましくも威厳に満ちた姿の魔王。
円卓に近付いた大魔王は、その大きな体の魔王に声を掛ける。
「やあ、アモン。相変わらず元気そうだね」
「おお、これはこれは……閣下こそ、相変わらずお元気そうで何より。ベリアル卿も、お久しゅう。閣下とご一緒に来られたのですな」
『アモン』と名を呼ばれた魔王は、ルシファーとベリアルに、丁寧に頭を下げ挨拶をした。
彼に声を掛けられたベリアルは、嬉しそうに返事をする。
「うむ、閣下から直々にお誘いがあってな、ご一緒させて頂いたのじゃ。アモン殿も、相変わらずで何よりじゃよ」
そんな言葉を交わしつつ、梟と蛇の姿をした魔王……アモンの瞳に、彼等の後ろで静かに控えている男の姿が映り込む。
一見、人間の様であるが、さて。
(おお……?此奴は、もしや……)
やはり彼も魔王である。
何か察知した様で、ベリアルに単刀直入に訊ねる。
「ところで、ベリアル殿。貴殿の後ろに居られるのは……外見はニンゲンの様だが……もしや、噂の新顔か?」
「流石はアモン殿、お察しの通りじゃよ。ゾロ、自己紹介を」
ベリアルはそう言いつつ、ゾロに進み出る様、促した。
ゾロは数歩前に進み出ると、大きなアモンを見上げて、物怖じせずに堂々とした体で挨拶をする。