第7章 ・死皇帝
そう言った彼の傍に、名を呼ばれたアドラメレクが、一瞬で姿を現した。
「はあーい!!ゾロっ!!呼ばれて飛び出て来たわよーん!!!貴方も会議に出席するって聞いて、思いっ切りオシャレな服を仕立てて来たのよーん!!!」
ゾロの天敵とも言える存在の御出座である。
彼の背筋に悪寒が走る。
今迄、何人かのオカマに出会った事のあるゾロであるが、このアドラメレク程、体中に虫酸が走るレベルのオカマに出会った事は流石になかった。
ゾロは、恐怖する。
「げっ……!!なんでお前が来たんだよ!!服なんてよ、ルシファー、お前が持って来りゃ良かっただろ!!!」
「いやそれが、アドラメレクも来たがってね……何時もよりも凄いハイテンションで、僕も止められなくてさ」
あからさまに嫌そうな顔をするゾロに、ルシファーはそう言って、明るく笑うだけ。
アドラメレクはゾロの前に勢い良く進み出て、その場でバレリーナの如く、くるりと一回りしてから、彼にスーツケースを一つ差し出す。
「貴方の礼服を仕立ててくれって、閣下から直々のご指示があったのよー!!だ・か・ら、私がわざわざ持って来てあげたのよーん!!ゾロ、感謝してね、うふっ」
アドラメレクはそう言うと、ゾロに向かってウインクし、熱烈な投げキッスを送った。
ゾロの体中に、鳥肌が立つ。
悪夢を見ている気分になった彼は、流石に動揺を隠せず、思わず後退りする。
そして、マシンガントークの撃ち合いが始まった。
「てっ、てめえ!!!き、キモいからそれは止めろっ!!!何回言やあ気が済むんだ、このオカ魔野郎っ!!!」
「さあっ、着て頂戴っ!!!遠慮しないでっ!!!私がちゃんと見ててあげるからっ!!!」
「だからそれが気持ち悪りいってんだよ!!!おれの話聞いてんのか、お前はっ!!!なんでおれの着替えてる所をお前に見せなきゃならねえんだよっ!!!いい加減にしろっ!!!このドエロウマサンバオカ魔野郎がっ!!!」
「だから、私はウマでなくてロバなのよっ、ロ・バ・な・のっ!!!失礼にも程があるわっ!!!いい加減にして頂戴っ!!!」
ロバの姿をした魔神は、馬と言われるのが余程嫌なのだろう。
ロバと言う事を強調して訂正するオカ魔……いや、アドラメレクに対して、ゾロは思わず絶句する。