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束縛の華と毒

第1章 没落した名家


「その代わり私と結婚してください、アランブール公爵令嬢…いえ、リリアンヌ」

突然の言葉にリリアンヌは驚いた。

「なっ、何を言うかと思えばそのような戯言を…!私は決して元平民と結婚など致しません」

「なるほど…別にお断りいただいても構いませんよ。ですがそれで本当に良いのですか?」

バリエ男爵の甘い声はまるで悪魔の囁きのようだった。

「もちろん、貴女のお母上には名医を付けさせましょう。以前の豪華な屋敷も、家紋の入った馬車も全て買い戻します。それと、あの美しいダイヤモンドのネックレスも…」

その声は甘くも狂気じみており、一度飲み込めば決して逃れられないとリリアンヌは悟った。

「あのダイヤモンドのネックレスを知っているのですか…?」

恐る恐る訊ねると、バリエ男爵は頷いた。

「ええ、もちろんですとも。夜会でお見かけしたときにあのネックレスを身につけられておりましたね。美しいダイヤモンドのネックレス、取り戻して差し上げますよ」

リリアンヌはバリエ男爵の瞳をじっと見つめた。
何を考えているのか分からない瞳はリリアンヌにとっては恐怖でしかないが、そっと手を取った。

「バリエ男爵、これは政略結婚です。私は決してあなたを愛することもございません。私が差し上げるのは公爵という地位だけ。愛など無くて結構でございます」

それを聞いてバリエ男爵は笑った。
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