第1章 没落した名家
「ありがとう、リリアンヌ。家族の存在が私の救いだ」
アランブール公爵は窓の外を見た。
どんよりとしており、今にも雨が降り出しそうだ。
「荷造りをしておきなさい。一週間後にはこの屋敷を出ていかなければならないからね。私は使用人たち全員の推薦状を書くことにするよ。これが私にできる最後の仕事だ」
アランブール公爵はそのまま執務室に向かった。
リリアンヌは慌てて自室に戻り、鏡台の引き出しを確認した。
アランブール公爵の言う通り、大切にしていたダイヤモンドのネックレスは箱ごと無くなっていた。
「おばあ様…申し訳ございません、私が至らぬばかりに…」
リリアンヌは一人きりの部屋で涙を流した。
他の宝飾品やドレスも無くなっており、残されたのは粗末なドレスばかりだ。
部屋に飾られていた美しい絵画、アンティークの家具も全て売り払われている。
「思い出が一夜にして消えてしまいました…もう戻ってこない楽しかった日々」
リリアンヌは静かに目を閉じた。
思い出すのは楽しかった思い出ばかりだ。
これからは茨の道を歩むことになるだろう。
「ですが私は決して忘れません。アランブール公爵家の一人娘として、誇りを持って生きていきます」
リリアンヌはそう決意し、静かに部屋を後にした。