第1章 没落した名家
「もう…お金がない?」
リリアンヌは思わず口を押さえた。
父親であるロバート・ド・アランブール公爵は泣きながら頷き、リリアンヌを強く抱きしめた。
「許してくれ、リリアンヌ。嫁入りしていない娘にこのようなことを告げなければならないとは…」
アランブール公爵の声は震えており、リリアンヌを握りしめている手も震えている。
リリアンヌは黙ってアランブール公爵の背中に手を回した。
「ではお父様、この先祖代々受け継いできた屋敷も…」
リリアンヌがここまで言うとアランブール公爵は静かに頷いた。
「お前が思っている通りだ。もうこの屋敷は手放すことになっている。そしてお前が大切にしている母上の形見も…」
アランブール公爵が話す母上とは、リリアンヌの祖母のことだ。
その形見は美しいダイヤモンドのネックレスであり、大きなダイヤモンドが特徴的だ。
「そんな、お父様…!」
リリアンヌは思わず泣き崩れそうになったが、首を振った。
生き残るにはこれしかないのだ、そう自分に言い聞かせた。
「お父様、私たちがどれだけ没落しようとアランブール家であることに変わりはありません。私は貴族としての誇りを忘れず、生きていこうと思います」
リリアンヌがそう言うと、アランブール公爵も頷いた。