第3章 ヒーローの初試練
透き通るような青空が、胸の奥まで染み渡るようだった。
雄英高校の大きな門がゆったりと、その存在感を放っている。
その前に立った私は、知らず知らずに息を呑んでいた。
いつもは変えた黒髪と茶色い瞳で、目立たぬように身を隠してきた。
それでも、視線は自然と私に吸い寄せられて、熱を帯びているのがわかった。
すれ違う生徒たちが振り返り、ささやき、驚きの色を浮かべる。
その視線はただの“美しさ”じゃない。
なにか、触れたら壊れてしまいそうな、
けれど揺るぎない強さと、儚さが混ざり合ったもの。
胸の奥がざわりと疼いた。
それは期待なのか、恐怖なのか——わからない。
だけど、覚悟を決めて深く息を吸い込んだ。
『(今日からここが、私の戦場だ)』
震える足を一歩、また一歩と踏み出し、
校舎前の掲示板に目を向ける。
名前を見つけた瞬間、胸の奥から熱いものが込み上げてきて、
目頭が少し熱くなった。
『1年A組……』
知らない名前たち。
まだ誰とも交わしていない言葉たち。
未来のすべてが、ぎゅっと胸に詰まった。
目を閉じると、期待と不安が交差するその波が、
私の心を優しく揺らした。