第24章 想いを、繋ぐために
ふたりのやり取りを笑って見ていたそのとき──
名前を呼ぶ声が、どこかから飛び込んできた。
振り返る間もなく、胸に柔らかい衝撃。
「想花お姉ちゃん…っ!!」
小さな身体が勢いよく飛びついてくる。
私はとっさに腕を広げて、その子をしっかりと受け止めた。
『壊理ちゃん……!』
ぎゅっとしがみついてくる彼女を、私はそっと抱きしめる。
小さな肩が震えている。
でも、その顔には──涙じゃなく、笑顔が浮かんでいた。
『……大丈夫? 疲れてない?』
抱きしめたまま、私は問いかける。
この子の個性は大きい。使えば使うほど、身体への負担もあるはずで。
まだ小さな体なのに、きっと、無理をしてる。
けれど壊理ちゃんは、少しだけ顔を上げると──
「うん!想花お姉ちゃんといると、なんかね……不思議と疲れないの」
満面の笑みだった。
そのひと言に、私は思わず胸がじんと熱くなった。
『……そっか。よかった』
ほっとしたように息を吐いて、私はそっと彼女の頭を撫でる。
『じゃあ……もうちょっとだけ、私を助けてくれる?』
壊理ちゃんが、パッと明るく頷く。
私は彼女をしっかりと抱き直して、
仲間たちの方へと視線を向けた。
みんな、私たちを見守ってくれている。
その眼差しに、たしかな想いを感じた。
だから、私はまっすぐに応えるように笑った。
『──行ってくる』
白い翼を広げて空へと、飛び立とうとした、そのとき。
ふと、視線を感じて振り返る。
そこには、ホークスの姿があった。
……いつものように軽口を叩くでもなく、
冗談めかした笑みもなく。
ただ静かに、私の背を見つめていた。
その目が、ほんのわずかに揺れていた。
心配を、隠しきれていない顔。
『──平気だよ』
私は笑った。
安心させるように、強く、優しく。
『ちゃんと、戻ってくるから』
そう言って、壊理ちゃんをしっかりと抱き直す。
ホークスが何かを言いかけたように口を開く。
けれど──結局、何も言わなかった。
ただ、ほんのすこしだけ目を細めて。
私の言葉を信じるように、そっと頷いてくれた。
その仕草が、何よりも嬉しくて。
私は風を蹴って、空へと舞い上がる。
──まだ癒えない場所へ。
もう一度、希望を届けに行く。
そして今度こそ、
みんなの“日常”を取り戻すために。
