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【ヒロアカ】re:Hero

第7章 君に負けたくない


地雷原のちょうど中間あたり。
私は風に乗って、ふわりと一度だけ振り返った。

その瞬間――すぐ背後に、轟くんがいた。

「……星野、こっちに来い」

静かな声。
氷のように澄んだその声音で、そっと手を差し出してくる。

(……え?)

風の中、差し出された手。
その仕草に、胸がほんの少しだけざわついた。

でも――

「触んなって!」

突然、風が巻いた。
爆豪が、私の肩をぐいっと引いて、その手を避けるように立ちはだかる。

「おい、轟のやつ……星野に触んなよ!」

その声音に、明らかな怒気。
バチッと火花のように、ふたりの間に空気が張り詰める。

(ちょ、ちょっと待って!?)

この空中戦のど真ん中で、なんで雰囲気が修羅場になってるの!?

観客席からは、プレゼント・マイクの大声が響いた。

「おっとぉお!? これはまさかの三角関係勃発ッ!! 恋の障害物競走かァ!?」

「こりゃ熱いぞォ!爆豪のその反応、もしや嫉妬!? 独占欲? それともただの爆発癖!?」

「……落ち着け、マイク。競技はまだ終わっていない」

相澤先生の呆れ声が、妙に冷静に重なる。

けれど――
この空の上では、すでに戦いは別の意味でも火花を散らしていた。

轟くんの手はまだ差し出されたまま。
爆豪は私の前に立ち、視線を逸らさずに構えている。

まるで“譲らねぇ”とでも言いたげに。

『ちょ、ちょっと!? なんで障害物競走で修羅場始まってんの!?』

「……手、取るのかと思った」

「はァ? んなわけあるか! その手は俺が叩き落としてやるわ!!」

「……好きにすれば」

目の前のふたりが、ヒーロー科のエースでなければただの恋愛バトル。
でも今は、どこまでも真剣な“取り合い”だった。

(なんでここで!? いや、でも……ちょっとだけ、悪くないかも)

なんて思ってしまった私は、たぶん今すごく顔が熱い。

風が流れていく。
恋と競技が混ざり合う、空の上の三つ巴。

――この戦い、まだ終わらない。
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