第7章 君に負けたくない
地面一面に散りばめられた、無数のプレート。
その下には、踏んだ瞬間に爆発する“地雷”が仕込まれている。
私は思わず足を止める。
前を走っていた爆豪も、ぴたりと動きを止めていた。
「……あー、うぜぇな」
観客席がざわつく。
慎重に足取りを変える生徒たちも増えた。
でも――爆豪はにやっと笑って、言い放った。
「モブ共が、邪魔なんだよ」
そして、轟くんに続いていた生徒たちを横目に――
強烈な爆風とともに、爆豪の身体が真上に打ち上がった。
(……なるほど。そうくるか)
地雷を逆手に取って、高度を稼いで一気に空中移動。
その動きに、私は一歩も迷わず踏み出した。
『……ま、いっか。ちょっと拝借』
ふっと体を軽くする。
そして、風を蹴って――爆豪の背中に、ぴたりとしがみついた。
「はァ!?!?!?!?!?!?」
振り返った爆豪が、怒鳴り声とともに目をひん剥く。
「なァァァァァァんでお前いんだよ!!!」
『ちょっとだけ背中借りるね♪』
「フザけんな!! 俺は乗り物じゃねぇぞ!!」
空中では、再び爆破。
爆豪が進路を変えながら、ブレる体勢をなんとか支えてると――
「今の見たかお前!?!?」
「想花ちゃん、爆豪の背中乗って飛んでんだけど!?!?」
「え、なにこれ……付き合ってる!?!?」
あちこちから叫びが飛び交ってた。
でも、そんな声はもう聞こえない。
爆豪はぐいっと口を歪めて、唸るように言った。
「……チッ。勝手にくっついてきといて、落ちても知らねぇからな」
『うん、それでもいいよ。どうせ落ちたら、バカツキも巻き添えだし』
「お前マジでうるせぇ」
……だけど。
その声は、ちょっとだけ笑ってた。
爆破の推進と、私の無重力に近い軽さ。
ふたりで駆け抜ける空は、少し不安定で、だけどすごく自由で――
地上の地雷原を、ド派手に吹き飛ばしながら、
私たちは誰よりも高く、誰よりも速く、前へと進んでいた。