第7章 君に負けたくない
轟くんは、やっぱりすごかった。
ヴィランボットの群れに突っ込んだその瞬間、
彼の手から放たれた氷が、まるで意志を持ったかのように地面を這い、
一気に巨大な氷柱となってボットたちの脚を絡め取っていく。
何の無駄もない動き。
力強くて、でもどこか静かで。
圧倒的な効率と制圧力。
(……やっぱり、轟くんだ)
私は、上空からその光景を見つめていた。
冷静で的確――本当に、“ヒーローらしい”戦い方だった。
でも、ふと気づく。
(上からなら……もっと、広く一気に凍らせられる)
その瞬間、身体が動いていた。
翼を大きくはためかせて、さらに高度を上げ、
風を切って一気に急降下――
センサーが私を捉えた瞬間に、私は両手を広げる。
冷気を一点集中、空中から解き放つ。
『――凍って』
空から落ちる、鋭い白。
一瞬で、ボットたちの上半身が凍りついていく。
ギシギシと音を立てて止まった動き――
そのまま崩れ落ちた機体から、冷気が静かに立ち昇った。
「な、なんだ今の!? 上空から冷気の攻撃ぃ!?!?」
プレゼント・マイクの実況が絶叫に変わる。
「まるで……空から降りてきた氷の女神かァ~~~っ!!!」
ざわめく観客席。
その横で、相澤先生がぽつりと呟いた。
「……あいつ、応用力はあるからな。轟を見て、即座に真似たんだろ」
私はさらに空を飛び移るように動きながら、次のロボへと狙いを定めた。
上空から俯瞰で戦況を読む――この位置だからこそ見える景色。
(……私にしかできない動きだ)
そのとき――地上。
「チッ……やりやがったな」
爆豪の舌打ちが風に乗って届いた。
けれどその目は、ほんの少し笑っていた。
「……ちょっと見ねぇ間に、ずいぶん飛ばしてんな、てめぇ」