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【ヒロアカ】re:Hero

第7章 君に負けたくない


あれから――
他クラスに囲まれ、まっすぐな視線を突きつけられたあの日から、心の中にはずっと波が立っていた。

ざわめく毎日。張り詰めた空気。
私はずっと冷静なふりをして、何も変わらないような顔で過ごしてきた。
……でも本当は、ずっと考えてた。

どうするべきか。
いや――どう“決める”かを。

雄英体育祭。
全国中継されるこの舞台は、私を晒すにはこれ以上ない場所だった。
もし、あいつがどこかでこの映像を見ていたら。
髪も、瞳も、顔も――“本来のままの私”に、気づかないわけがない。

(……いいよ。見つけさせてやる)

今まで隠してきたのは、ただ怖かったからだ。
両親を奪った“あの存在”に、もう一度目をつけられることが。
あの凍えるような視線と、全てを壊すような憎悪が――もう一度、私に向けられることが。

だから、私は逃げた。
何もなかった顔をして、隠し通してきた。

……でも、変わった。

USJでのあの事件。
ただ助けられただけじゃない。
あの時私は、“誰かを守ろう”と動いた。
その瞬間に、確かに心の奥の何かが――少しずつ溶けていったんだ。

(……私だって、立っていい)

怖くないなんて言わない。
囮になることは、震えるほど怖い。
でもこれは、私にしかできない“戦い方”だ。

逃げ続けたって、何も終わらない。
終わらせるためには、立ち向かわなきゃいけないんだ。
“本当の姿”で、“本当の自分”として。

(もし、私がここで晒されて、あいつが食いついてくるなら――上等だよ)

その覚悟だけが、あの二週間、私を支えていた。

そして――
迎えた、雄英体育祭。

これは、戦いの始まり。
ヒーローとしての試練でも、
私という存在が“逃げない”と決めた、初めてのステージ。

私は、ここで仮面を脱ぐ。
隠すのは、もうやめる。
逃げるのは――今日で終わり。
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