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【ヒロアカ】re:Hero

第6章 また明日


想花side

髪から滴る水をタオルで拭いながら、私はふとカーテンの隙間から夜の空を見上げた。

『……はぁ。今日は……いろいろありすぎた』

轟くんのこと、あのキス。
彼の言葉の意味。
……心臓がまだ、時々きゅっとなる。

でもそれ以上に――

『……爆豪くんの、あの顔』

気まずそうな目。
何か言いかけて、結局言えなかった背中。
あのまま帰っちゃって、大丈夫だったのかな。

そんなことを考えていたら、胸の奥がじんわり痛くなった。

濡れた髪をまとめて、部屋着のフードをふわっとかぶった、そのとき――

「ピンポーン」

突然鳴ったインターホンに、心臓が跳ねる。

『……え? また誰か来たの?』

こんな時間に?
鼓動を抱えるように、そっと玄関へ向かった。

ドアを少し開けると――

『……爆豪、くん……?』

夜風が彼の髪を揺らしていた。
眉間のしわも、固く結ばれた唇も、全部が真剣で。
でも少しだけ、不安そうで。

(……なんで。なんで戻ってきたの)

その答えは、私の中で浮かぶより先に、彼の口から落ちてきた。

「……聞きてぇこと、あんだよ」

低くて、でもわずかに震えた声。
私は言葉を飲んだまま、小さくうなずいた。

『……うん。入って』

彼はそっと視線を落としながら、静かに部屋へ入ってくる。

玄関のドアを閉めた瞬間、さっきよりずっと近くで、彼の声が落ちた。

「……あの時の、あれ」

彼の視線が、私の唇にふれる。
思い出す。あの、事故みたいなキス。

「……たしかに、事故だったよ」

一歩だけ近づく彼に、心臓が跳ねる。

「でも……俺の、“初めて”だった」

その言葉に、胸がちくりと痛んだ。

思い出す。
あの混乱の中でぶつかった唇と、瞳をつぶった彼の顔。

……忘れられるわけ、ない。

彼は私に向き直り、まっすぐに言った。

「……お前は、どう思ってたんだよ」

その目が、声が、熱が。
嘘じゃないと、伝えてくる。

――これは、本気なんだ。

揺れる私の心ごと、まっすぐ見つめるその眼差しに、私は息を呑んだ。
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