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【ヒロアカ】re:Hero

第6章 また明日


荒く吐いた息に、自分でも気づかないほどの――焦りが滲んでた。

重苦しい空気が、部屋を充満している。
けど、それは部屋のせいじゃねぇ。
全部、自分の中の“逃げ”のせいだ。

(……行かなきゃ、後悔すんだろ、てめぇ)

ベッドの縁を睨みながら、奥歯をぐっと噛みしめる。
拳が震えるほど、全身がじりじりしてた。

(中途半端に背中向けて、逃げ帰ってきて……)
(あんな大事な空気の中で――あいつを、置いて)

ズキリ、と胸の奥が痛んだ。

まるで、自分の居場所を、誰かに取られたみてぇで。

「……は、何様だよ、俺が」

思わずこぼれた声は、思った以上に掠れていた。
情けねぇ。カッコ悪ぃ。
だけど、もう……見て見ぬふりできねぇ。

近くの上着を掴みとって、俺は駆け出した。

 

気づいたら、走ってた。

風を切って、喉が焼けても構わねぇ。
言い訳も、理屈も、今はいらねぇ。

(顔、見なきゃ……気が済まねぇ)
(ちゃんと、ぶつけなきゃ、狂いそうだ)

「チッ……また勝手にぐちゃぐちゃ考えて、ひとりで背負って……」

(なんでだよ。なんで俺だけ、こんな気持ちのまま――)

見慣れた家の輪郭が、視界ににじむ。

呼吸は乱れてるのに、胸の内はもっと荒れてた。
けど、その全部を押し込めて――
迷いなく、インターホンに手を伸ばした。

 

「……聞きてぇことがあんだよ」

喉が焼けるように熱い。

けど、それでも言わなきゃ――
自分が、自分じゃなくなる気がして。

「……あのキス、お前にとって、なんだったんだよ」

俺の“初めて”が、お前でよかったのか――
俺は、お前にとって……なんだった?

その答えを、ちゃんと聞かせろ。

 

――今度は、逃げねぇから。
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