第24章 想いを、繋ぐために
想花 side
ようやく、あのカメラの気配から解放されて──
空の上、私たちはただ、風に身をゆだねていた。
地上の騒がしさも、街のざわめきも届かない、静かな場所。
音がないわけじゃない。ただ、全部が優しい。
ひゅう、と吹き抜ける風。
それに混じって、かすかに羽音が聞こえる。
すぐ隣から──ホークスの羽ばたきが。
さっきのことが、夢みたいだった。
人前であんなふうに言葉を交わして。
隠してきたものを全部、曝け出して。
でもいま、あの瞬間を「間違いだった」なんて思わない。
彼がいてくれたから。
ちゃんと、聞いてくれたから。
ふと、隣を見た。
彼は前を向いたままだけど──
その表情は、どこか柔らかかった。
口元が少しだけ、緩んでる。
……それだけで、どうしようもなく胸があたたかくなる。
『……ありがとう』
声にならなかったその言葉が、風に溶ける。
私の髪が揺れて、目の前に赤い羽根が流れたとき──
「そんなんじゃ伝わんねーけど、まあ……いいや」
ふと落ちてきた声に、驚いて振り返ると、
彼はいつもの顔で、くしゃっと私の頭を撫でてきた。
不意打ちだった。
そんな優しさ、今はずるい。
『……泣いちゃうじゃん』って、笑いながら思う。
でもきっと、彼にはもうバレてる。
目を細めた私の表情も、少し潤んだ瞳も。
それでも何も言わずに、いつもの調子で言うんだ。
「……行くか。待たせてっからな、みんな」
ふと、彼が視線を落とす。
その先に──小さく、でも確かに、仲間たちの姿が見えた。
私は黙って頷いて、
白い翼を、そっと広げる。
そしてふたりで──
今度は、希望に向かって降りていった。