第24章 想いを、繋ぐために
言い終えた瞬間──
彼女は、はっとしたように目を見開いた。
『……す、すみません…っ、長々と……』
俯きながら、小さくつぶやくようにそう言って、
両手でマイクを丁寧に返す姿は──
まさに、どこにでもいる“16歳の女の子”だった。
さっきまでの堂々とした言葉が嘘みたいに、
恥ずかしさに頬を赤らめる様子に、報道陣の空気がふっと和らぐ。
そのマイクを受け取った一人の記者が──
思わず、聞いてしまう。
「……あの、ひとつだけ……」
「あなたは……ホークスさんの、特別な関係の方なのでしょうか?」
場が、すこしだけざわめいた。
けれど、彼女は驚いた顔のまま言葉を探し──
──その時だった。
「……ったく、まーたそうやってバレバレなこと言うんだから」
静かな声が、彼女のすぐ後ろ、そして少し上空から届く。
彼女も、報道陣も、その場にいた全員がはっと振り返ると──
そこには、羽織をはためかせながら宙に浮かぶ一人の男がいた。
No.2ヒーロー──ホークス。
……けれど、彼の背中にあったはずの大きな翼は、
まだ完全には戻っていない。
左右にわずかに広がった、小さな赤い羽根が揺れていた。
にもかかわらず──彼の動きは、いつもの彼そのものだった。
軽やかに空中を滑るように近づき、彼女のすぐ横、ふわりと宙に浮かんだまま寄り添う。
そして──ふ、と肩をすくめて笑った。
「……なあ、さすがに全国中継であれは、隠す気ないよな?」
思わず、彼女は『あっ……』と小さく声を漏らす。
顔を真っ赤にして俯き──
『……やっちゃった……』とでも言いたげに、そっと口元を押さえる。
そんな彼女を見て、ホークスはほんのすこしだけ──
ファンサの時とは違う、“素の笑顔”を浮かべた。
優しくて、あたたかくて、まるでふたりきりのときにしか見せないような、特別な笑顔。
「……ま、もう隠さなくていいよな」
その声は、とても静かで、とてもやさしかった。
彼女は何も言わなかったけれど──
小さく頷いたその仕草が、すべてを語っていた。
その様子を、報道陣はどこかバツが悪そうに、でも微笑ましそうに見守っていた。
誰かが咳払いをして、ようやく空気が現実に戻ってくる。
──誰もが知っていたヒーローたちが、
今、目の前で確かに“人として”存在していることを、
ただ静かに、受け止めるように。
