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【ヒロアカ】re:Hero

第24章 想いを、繋ぐために



――光が、そっと引いていく。

燃え尽きたように見えた街の上空に、
静かな風が吹いていた。

ほんの数分前まで、ここは地獄だった。
崩れ、叫び、泣き、潰えた命が無数に散っていた。

けれど今、蛇空市の姿は――
まるで“初めからそうであった”かのように、穏やかに在った。

割れた道路も、砕けたビルも、血に染まった地面も。
すべてが、嘘のように――戻っていた。

「……これ……」

誰かが、かすれた声で言う。

「……夢……じゃ、ないよな……?」

誰も答えられない。
信じたい。でも信じきれない。

「こんな……こんなこと、できるヒーロー……誰だよ……」

カメラマンがレンズから目を離し、ぽつりと呟く。
目の前にある奇跡を、どう言葉にすればいいのか分からなかった。

「……おい、見ろ。中央に、何かが……」

パイロットの低い声に、みなが一斉に振り返る。

カメラが揺れながら、その“中心”を映し出す。

そこに立っていたのは、ひとりの男だった。

痩せ細った体躯。けれど、誰もが知るその髪型、その姿。
数ヶ月前に戦えなくなったはずの、かつての"象徴"。

「……オールマイト……?」

かすれるように記者が呟いた。

――その隣に、少女がふたり。

ひとりは白髪の、小さな手を握って寄り添う少女。
怯えながらも、その眼はまっすぐに何かを見つめていた。

もうひとりは――銀髪の、静かに膝をつく少女。

彼女の背に。

光が集まり、そっと咲いた。

風に揺れる羽のように、優しく、鮮やかに――翼が広がる。

まるで、想いそのものが形になったような。

まるで、“祈り”が空を抱いたような。

「……飛ぶぞ……!」

誰かが言った。

銀髪の少女は、静かに立ち上がり。
風をはらみ、ふわりと舞い上がる。

世界が、固唾をのんだ。

――彼女は、まっすぐにこちらへ飛んでくる。

報道ヘリへ。
カメラのもとへ。

まるで、“自分の目で見てほしい”と願うように。
まるで、“伝える”ことを、自ら選んだかのように。

あの日、象徴が背中で語ったように。
今、少女が――風で、それを語ろうとしていた。
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