第24章 想いを、繋ぐために
* * *
「……だめだ……こんなの……」
低く、重く、ヘリの機内に声が落ちた。
報道クルーのひとりが、頭を抱えるようにしてうずくまっている。
焦げた空。崩れた街。途切れた通信。次々と届く死亡の報。
――これは、放送できない。伝えられる言葉が、もう見つからない。
「誰が希望持てって言えるんだよ……もう、終わったんだよ……」
誰も、返せなかった。
声も、意志も、何もかもが凍りついたようだった。
機内に、重苦しい沈黙が落ちる。
そのときだった。
「……おい、ちょっと待て。見ろ、あれ……!」
操縦桿を握るパイロットが、低く呟いた。
「……街の、中心だ……!」
カメラマンが反射的にレンズを向ける。
記者が目をこすり、ゆっくりとその先を見た。
「……なに……これ……」
そこには――
さっきまで灰色の瓦礫に埋もれていた街が、
淡く、やわらかな光を帯びて――
まるで、祈りに応えるように、“再生”を始めていた。
崩れたビルが、ひび割れた地面が、
ゆっくりと、静かに、音もなく――
まるで記憶をたどるように、元の姿を取り戻していく。
それは奇跡のようで。
けれど、確かに“いま”起きている現実だった。
「っ、回せ!カメラ、回せ!!今すぐ全国に中継出せ!!」
機内に一気に張りつめる空気。
震える手でマイクを握りしめながら、記者が息を呑む。
喉の奥が焼けるようで、でも声は、自然とこぼれた。
「……こちら、蛇空市上空……いま、この街で……“何か”が起きています……!」
それは、言葉では追いつけない光景だった。
「……さっきまで……命の気配すら失われていた街が……いま、光の中で……静かに、息を吹き返しているんです……」
誰かが、ぽつりと呟く。
「……戻ってる……?」
けれど、誰にも“どうして”かは分からない。
誰が。なんのために。どうやって。
わかっているのは――
これはただの自然現象じゃない。
人の手によってもたらされた、明らかな“奇跡”。
それでも、まだ姿は見えない。
この光の中心に、いったい“誰”がいるのか――
それは、まだ映っていない。