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【ヒロアカ】re:Hero

第24章 想いを、繋ぐために



白銀の光が戦場を包み込み、
崩れた街が、すこしずつ形を取り戻していく。

焼け焦げたビルの屋上に立つ男は、
ゆっくりとその光を見つめながら、小さく息をついた。

「……ほんとにさ……」

どこか笑っているような声だった。

「……待ってるって言ったの、誰だったっけな?」

軽く肩をすくめながらも、
その金色の瞳は優しかった。

ふわりと風が吹いて、彼の赤い羽根が舞う。

地上のその少女――
血に染まった服のまま、なお“誰か”のために祈る姿を見て、

ホークスは、そっと目を細めた。

「……ったく、そう来るか……」

呆れたように、でも嬉しそうに。

彼女らしい。
誰よりも、彼女らしい。

「……お前なら、そうだよな……」

そう、彼女はいつだってそうだった。
自分の命を削ってでも、誰かを想って、誰かを助けようとする。

光の中心に立つその背中が――
たまらなく愛おしかった。

そして、同時に――

「……だから、目ぇ離せねぇんだよ……」

指先でそっと羽根を撫でながら、
ホークスはもう一度、彼女を見つめた。

――少し離れた場所では、轟が立ちすくんでいた。

空気の流れが変わったことに、
彼は瞬時に気づいていた。

あたたかい風。
土の匂い。
それに混ざる、淡い命の気配。

「……これは想花、か?」

呟いたその声に、隣の医療スタッフが驚いたように顔を上げた。

そして――担架の上。

「……っ、爆豪くんが……!」

医療スタッフの叫びに、周囲がどよめく。

確かに、心肺停止寸前だったはずの爆豪が。
その胸が、僅かに、でも確かに上下していた。

「……チッ……なんで……俺……治ってんだよ……」

目を開けた爆豪が、小さく舌打ちしながら呻く。
視線の先にあったのは、あの光──街を再生し続ける少女の背中だった。

そしてもうひとり。

緑谷の身体にも、回復の兆しは見られていた。
でも彼はまだ、目を開けない。

担架の上、かすかに指が動いた気配だけを残して──
意識はどこか、別の場所にあるようだった。

「……デク……」

爆豪の視線が隣に向く。
そこに“確かに命がある”と知って、何かが胸に込み上げてくる。

それは、
命を拾った者だけが知る、
尊く、温かな感情だった。
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