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【ヒロアカ】re:Hero

第24章 想いを、繋ぐために


ALLside

蛇空市。
その一角――戦闘の爪痕が最も深く刻まれた場所に、ふたつの光が灯った。

ひとつは、少女の“祈り”が生んだ想いの力。
もうひとつは、過去を巻き戻す少女の、純粋な願い。

淡く、やわらかく、けれど確かに強く。
その光は、ふたりの掌から世界へと沁みわたり、
やがて静かに、街そのものへ拡がっていく。

最初に変化が現れたのは、瓦礫の中だった。

破壊された石畳の隙間。
崩れ落ちたコンクリートの端から――

小さな、小さな芽が、ふわりと顔を出す。

その芽は、やがて花へと変わる。

紅、桃、白、紫――
どれも優しい色をした、小さな花たち。

光に触れたその場所から、まるで春がやってきたかのように、
地面が緑を取り戻していく。

その花の下で、倒れていたひとりのヒーローが、目を開けた。

「……あれ……俺……生きてる……?」

それに応えるように、もうひとりが手をついて起き上がる。

「怪我が……治ってる?」

次々と――
その光に包まれた者たちが、目を覚ます。

動かなかった手が、また動く。
立ち上がれなかった足が、ふたたび力を取り戻す。

癒し。
再生。
そして、希望。

そのすべてが静かに、でも確かに街を変えていく。

破壊された建物の一部が、少しずつ元の形を取り戻し、
折れた柱が、ひとりでに再び立ち上がる。

瓦礫の奥に埋もれていた市民が、目を開け、声を漏らす。

「……光が……やさしい……」

「こんなぬくもり、久しぶり……」

そして、その光が――
“もう還らない”とされた命の近くにも、ふれていく。

――ほんのわずか。
ひと息のような命が、光に包まれてふるえる。

「う……うぅ……」

小さな声が、土埃の奥から聞こえた。

それを目にした者たちが、息をのむ。

あれは確かに、絶命していたはずの――

「……ウソだろ……!生きてる……!?」

それは、まさに奇跡だった。

誰もが祈り、願い、手が届かなかった“救い”が、
今、現実となってそこにある。

空を覆っていた煙が、ゆっくりと晴れていく。
灰に覆われていた地面に、緑が芽吹き始める。

そして、空が――

再び、青を取り戻していった。
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