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【ヒロアカ】re:Hero

第24章 想いを、繋ぐために


想花side

どこまでも、壊れていた。

瓦礫――
崩れた街並み。
動かなくなった建物の隙間に、倒れているヒーロー。
必死に誰かを救おうとする救助班。
嗚咽を漏らしながら、名前を呼び続ける市民の声。

全部が……全部が、胸を締めつけた。

その光景のなかで、隣にいたオールマイトが、息を詰めたように声を漏らす。

「……なんてことだ……」

目を見開いたまま、声はかすれていた。
きっと彼は、自分の無力さを責めているのだ。
何もできなかったことを、歯痒く思っているのだ。

でも――

私は、立ち止まらない。

震える壊理ちゃんの手を、ぎゅっと握り直して、
私は静かにしゃがみこんだ。

壊理ちゃんの目の高さに、自分を合わせる。

そして、そっと瞳を見つめる。

『……壊理ちゃん』

私の声は、小さかった。
けれど、心の底から届くように、
願いを込めて、紡いだ。

『私は少しでも、この絶望を拭い去りたい。
 この壊れてしまった世界に……ほんの少しでも、希望を咲かせたい』

小さな手に、少しだけ力を込める。

『……壊理ちゃん。力を貸してくれる?』

その時だった。

壊理ちゃんが、ぽろぽろと涙を流して――
ぎゅっと、私の身体に抱きついてきた。

「大丈夫だよ」

震える声。

でも、その声には、確かな意志があった。

「お姉ちゃんとふたりなら……大丈夫だよ」

私は、そっと目を閉じた。

痛みが、胸に広がった。

けれど、それ以上に――
確かに、温かさがあった。

私は、願う。

どうか。
この壊れた世界が、元に戻るように。

どうか。
これ以上、誰かが泣かなくて済むように。

どうか。
儚く散っていった命が、もう一度――
“生きる”という光を取り戻せるように。

私の“想い”と、壊理ちゃんの“巻き戻す力”が、重なった瞬間だった。

足元から、ふわりと光が咲いた。
温かくて、やさしくて、涙が出そうになるような光。

それは私たちの身体を包み、
やがて、街全体へと広がっていく。

傷ついた街を。
痛みにうずくまっていた人たちを。
倒れていたヒーローたちを――

ひとつひとつ、やさしく包んでいく。

あたたかい春風のように。
小さな命の芽吹きのように。

ただ、静かに。

でも、確かに――
この世界は、今、“再生”を始めていた。
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