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【ヒロアカ】re:Hero

第24章 想いを、繋ぐために



「……おまえは、ここで待ってろ」


傷だらけの彼女を、そっと地面に降ろす。
その体温が離れるだけで、胸の奥がひゅっと冷える。
この場に置いてくなんて、本当は気が狂いそうだ。
でも――今のオレは、彼女だけを守る存在じゃない。
ヒーローとして、戦場に戻らなきゃいけねぇ。

彼女の目を見たまま、もう一度だけ強く抱きしめた。
壊れそうなくらい細くて、でも、心だけは誰より強くて。
こんなに痛々しい姿なのに、オレのことを心配するなんて――
ほんと、おまえってやつは。

「すぐ終わらせる。終わったら……また迎えに来るから」

『……行って、ほしくないって……言ったら、止める?』

その言葉が、まるで刃物みてぇに胸に刺さる。

わがままなんて、ふだん絶対言わない彼女が。
こんなときに、そんな声を出すなんて。

一瞬だけ迷った。ほんの一秒。
でも――それでも、止まるわけにはいかなかった。

「……止まれたらな。オレがオレじゃねぇなら」

皮肉でも嘘でもない。
オレは、命張るために生まれてきた。
だからこそ、戻る理由が“誰か”になったことが――
今、どれだけの意味を持つかって、痛いほどわかる。

彼女は小さく息をのんで、ふっと笑った。

『……冗談。啓悟……行ってきて』

“行ってきて”。
たったそれだけで、
どんなヒーロー支援装備よりも、背中を押してくれる。

――オレは、信じられてる。
オレは、この子に“帰ってくるって信じてもらえてる”。

「……ありがとう」

そう呟いて、もう一度だけ彼女を強く抱きしめた。
その体温も、鼓動も、息の音も、すべて忘れないように。

そっと身体を離して、彼女の目を見つめる。

「……全部終わったらさ。ごほうび、もらってもいい?」

『……ばか』

泣き笑いでそう言う彼女の目元を、
風がそっと撫でていく。

「……行ってくる」

焼け焦げた羽根を広げ、風を巻き上げた。
背を向ける瞬間、
胸の奥が、ぎゅっと締め付けられる。

だけど――怖くはない。

だって、戻る場所がある。

オレの帰る場所は――
おまえの隣しか、ねぇんだから。
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