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【ヒロアカ】re:Hero

第24章 想いを、繋ぐために


ホークスside

――間に合え。

ただ、それだけを願っていた。
誰かの声が、頭の奥を締め付けるように響いた瞬間、
オレはもう考えるより先に飛んでた。

まだ――羽根はほとんどねぇ。
それでも、“飛ぶ”ことは、オレにとっちゃ祈りみたいなもんで。
風を裂く感触だけが、唯一の希望に変わる。

……そして、見えた。

瓦礫の向こう、裂けた空の下。
ベストジーニストの背後に、黒い塊――ハイエンド脳無の群れ。
その遥か上。崩れかけた巨躯の背に、
ぐったりと身を伏せる、小さな影。

――生きてた。

胸の奥が一瞬だけ軽くなる。
同時に、呼吸が、うまくできなくなるくらい痛くなった。

「ッ……邪魔だ、クソ野郎……!」

羽根をすべて飛ばす覚悟で、ハイエンドの一体に突っ込んだ。
刺すような火花と衝撃。けど止められた――それでいい。

崩れ落ちるマキアの背に、必死で手を伸ばす。

「……頑張ったな」

そう言った瞬間、喉の奥が詰まった。

血まみれの彼女の姿を目の前にして、
なにより先に出たのは、責める言葉でも、焦りの声でもなく――
ただ、そのひとことだった。

「……ここから、離れるぞ」

震える身体をそっと抱き上げた。
その細さが、今にも崩れそうで、思わず力が入る。

すると。

『……けい、ご…?』

かすれた声が、耳元で揺れた。

『……啓悟……ほんとに、きてくれたの?』

その声は、確かめるようで、
夢みたいに儚くて――

胸が締め付けられた。

「……ああ。オレだよ」

「遅くなって、悪かったな」

そう答えるしかなかった。
でもそれで、彼女がほっと小さく息を吐いたのが分かった。

風を巻き上げて、崩れた建物の陰へ。
脳無の目から外れる距離まで、なんとか移動する。

彼女の身体は熱を失っていて、
服には乾いた血が滲んでいた。

「……医療班、すぐに……っ、」

通信に手をかけた瞬間、
首をふるふると振って、彼女が微笑んだ。

『……大丈夫。傷は…もう焼いたよ』

「……っ……バカ……」

痛みに鈍く笑うその顔に、胸がどうしようもなく痛んだ。

「……なんで……そんな顔、するんだよ……」

こんな時でも、
誰かを安心させようとして、
自分だけに痛みを背負わせて。

おまえってやつは、
最後まで、そういう奴なんだよな。

だからこそ、
もう二度と――この手を離すもんか。
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