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【ヒロアカ】re:Hero

第24章 想いを、繋ぐために



マキアが暴れる。

再び荒ぶるその巨体を、ベストジーニストは全力で糸で縛り直した。
身体の奥まで捻じ込むように繊維を潜らせ、動きを封じる。

だが――その背後。

闇の中から、ゆらりと“それ”は現れた。

にじむような気配。
溶けるような光沢。
形の定まらない皮膚。
人の形をした“化け物”たち。

――ハイエンド脳無。

『……っ、うしろ……!』

大きな声が出ない。
喉が焼けついたように、ひゅう、と空気が逆流する。

背筋が、冷たいものに撫でられた。

“来る”。
わかってるのに、動けない。

この距離では、助けられない。
私にも、もう力は残っていなかった。

(……いや……やだ……!)

助けて――
誰か――
誰でもいい……

……違う。

私が、呼びたい名前は――

『……たすけて……ホークス……っ』

その声は、小さな、小さなものだった。
けれど、確かに名前を呼んだ。

心の奥から、絞り出すように。

泣いてなんかいられないはずだった。
強くいなくちゃいけなかった。
でも――もう、限界だった。

崩れていく世界の中で、彼の影を思い浮かべた。

(……お願い、もう一度だけ……)

その瞬間だった。

「――そこだァアアア!!」

光が、駆けた。

爆音。風圧。
鋼のような肉体が、宙を裂く。

その姿は、誰よりも真っすぐで――

「通さないッ!!」

地面を蹴って跳び出したのは、ミリオ先輩だった。
かつて“個性”を失ったはずのその背中が、まっすぐにベストジーニストを庇う。

「グリングウィイブ!!」

「レシプロバースト!!」

空を裂いたのは、波動ねじれ先輩。
疾風のように走り抜ける、飯田くんの影。

そして――

紅い閃光が、戦場を駆ける。

全身傷だらけの勝己が、吠えるように飛び込んでくる。

「おい、脳無共!!相手になってやらァ!!」

その叫びとほぼ同時に、風が変わった。
空が切られるような気配。

“彼”はそこにいた。

いつもより小さい紅の翼を広げ、戦場に降り立つ姿。

誰よりも早く、誰よりも軽やかに――でも、
誰よりも、怒っていた。

「間に合った……けど」

その瞳が、まっすぐこちらを見つめた。

「……よく、頑張ったね」

胸が、きゅうっと音を立てた。

やっぱり――来てくれた。

私は、思わず涙をこぼしそうになった。
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