第24章 想いを、繋ぐために
――まるで、世界が縫いとめられたようだった。
空気すら、動かない。
糸のような光が、空を這うようにして“全て”を縛っていく。
その繊細な輝きは、一筋の希望にも似て見えた。
トゥワイス、スピナー、コンプレス。
そして、気を失ったままの死柄木弔。
さらには、山のような巨影――ギガントマキアさえも。
纏う筋肉の一つ一つに、鋼のような繊維が食い込み、動きを封じていた。
視界の奥。
その戦場を俯瞰するように、ベストジーニストが浮かぶ。
確かに、ヒーローが“押していた”。
そして今、戦況は――
『これで……』
私は、マキアの背上にうずくまったまま、かすかに微笑んだ。
意識は朧で、身体はもう動かなかったけれど。
張り詰めていた全てが、やっとほどけていくような気がした。
“終わる”――そう、思ったのだ。
……けれど。
「――はあああああああッ!」
――風が、震えた。
地響きのような咆哮。
わずかに、マキアの巨体が、息を吐くように揺れた。
私の下で、筋肉が脈打つ。
止まったはずの世界が、静かに軋み始める。
『……ぅ……ッ…』
声にならない声が、喉を震わせた。
嫌な予感が、胸の奥を焼くように駆け抜けた。
次の瞬間だった。
「あっつ……うぜぇんだよ……この糸……!!」
爆ぜるような熱気。
灼熱の炎が、夜空を裂いた。
――荼毘。
彼の炎が、ベストジーニストの糸を焼き尽くし、解き放たれる。
束縛されていた四肢が、燻るように解放されていく。
「……ッ!」
焦凍の声が響いた。
あの人が、再び立ち上がった兄の影を追って、前に出る。
空を、戦場を、再び“熱”が覆いはじめる。
私は、その場から動けないまま、ただ祈るように空を見つめた。
――もう一度、始まるんだ。
まだ、終わっちゃいなかった。