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【ヒロアカ】re:Hero

第24章 想いを、繋ぐために



私は――荼毘の方へ向かっていた。

胸の奥に灯った願いを、もう一度あの炎の前に届けたくて。
仲間たちを守るために。
あの人の背中を、止めるために。

……けれど。

「……っ――」

視界が、歪んだ。
足元が抜け落ちたような感覚に襲われて、
私はその場に崩れ落ちた。

「……ぐ、ぅ……っ」

喉の奥から熱がせり上がる。

思わずついた掌に、紅いしぶきが散った。
震える身体。指先すら、力が入らない。

痛い。
呼吸するたび、内臓を何かが締めつけてくる。
壊れていくのがわかる――それでも、顔を上げた。

私の前に迫る、絶望的な光景――

燃え盛る炎。
立ち尽くす焦凍とエンデヴァー。
その傍らには、重傷を負った勝己と緑谷くん。

そして――
その全てを呑み込もうとする、荼毘の“炎”。

(……やだ、みんな……!)

動けない。叫べない。止められない。

この手で、“みんな”を守ると誓ったのに――
なのに。

(お願い……誰か……誰か……!)

その瞬間だった。

ばっ、と。
風が裂けたような音がした。

荼毘の身体が、何かに絡め取られるように引き止められた。

「……なっ……!?」

一瞬、炎が揺らぎ――動きが止まる。
誰かが、彼を止めて――彼らを、守ってくれた。

私は、震える手でその方向を見つめた。

霞む視界の、その奥。
揺れる空気の向こうに、“それ”は立っていた。

長く、まっすぐなシルエット。
その影は、静かにこちらを見据えていた。

こんな状況で……
まだ戦える人が――誰か、いた?

ありえない。
……もう、誰ひとり動けるはずなんて、なかったのに。

……でも。

『……っ…』

涙が、零れた。

こみ上げるものが、全ての痛みを溶かしていくようで。

『やっぱり……彼は、“生きてた”……っ…!』

――そう、“そんなこと”、する人じゃない。

私は、知ってた。
私は……信じてた。
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