第24章 想いを、繋ぐために
私はその声を、目を閉じて、ただ――聞き続けた。
「ここからが本題だ」
男の声が、硬質に変わる。
映像が切り替わった。
紅の羽根が、男の背中を貫く。
振り返りもせず、真っ直ぐに突き刺す。
背中から、白と黒の身体が崩れ落ちる。
スピーカーが、低く響く。
「No.2ヒーローの、ホークス。
……ホークスは泣いて逃げるヴィランを、
躊躇なくその刃で貫いた、僕が守ろうとした目の前で」
(……やめて)
「そして彼は僕らに取り入るために、
休養中のNo.3…ベストジーニストを――殺しました」
映像がまた切り替わる。
誰も知らなかった真実。
「……彼の父親は連続強盗殺人犯ヴィランだった。
彼が経歴も本名を隠していたのは、そのためでした。」
息を吸った。
深く、静かに。
(それでも、私は……)
誰よりも近くで、彼の笑顔を見てきた。
誰よりも深く、彼の苦しみを感じた。
それが嘘じゃないと知ってる。
足元に、血が滲んでいる。
破れた服の下、赤く熱を持つ傷口。
そっと手を翳す。
光が、掌から零れ落ちる。
赤い炎のような力が、私の腹を包んでいく。
焼けるような痛みが走っても、目を逸らさない。
『…………っ!!』
(痛みは、生きてる証だ)
誰も見ていない場所で、誰かを想って。
彼はずっと、そうやって戦ってきた。
私は静かに立ち上がる。
無言で、コンソールの前に進む。
スケプティックが顔を上げた瞬間、
私はただ、手を伸ばして――
『……もう、あなたは寝てて』
男の身体が、ふっと崩れ落ちる。
操作されていたモニターが、一斉にノイズを撒き散らして、暗転した。
世界が、静かになった。
私は、何も言わずにその場に立ち尽くす。
空気が燃える匂い。血の匂い。
どれも消えないまま、ただ一つ、確かだったのは――
掌に残る、微かな温度だった。