第24章 想いを、繋ぐために
ホークス・常闇side
応急処置の済んだ小さな救護テント。
焦げた布と薬の匂いが、漂っている。
その中心で、彼はまるで何かに抗うように、眉をひそめていた。
「ホークス……」
常闇は、小さく息を呑む。
包帯でぐるぐるに巻かれた身体。
焼け焦げたジャケットが、まだ一部、身体にこびりついている。
そのとき、寝かされていた男のまぶたがぴくりと揺れた。
「……っ……ぁ……」
かすかに、声が漏れる。
唇の動きでようやくそれが“言葉”だとわかった。
「……っ……想花……」
息の音が漏れるたび、喉が焼けるようだった。
それでも、絞り出すように──
彼は、たった一人の名前を呼んだ。
常闇の喉がかすかに震える。
……伝えなければならない。
けれど、どう伝えればいいのか、わからなかった。
「……さっき、連絡が入った。……あいつは……ヴィラン連合に」
言いかけて、目を伏せる。
「……攫われたそうだ」
その瞬間。
ホークスの身体が、びくりと震えた。
そして、全身を軋ませながら──
焼かれた背中で、無理やり身を起こそうとする。
「……っ、何を……!」
常闇は慌てて彼の肩を押さえた。
「無理だ、そんな身体で動いたら……!」
「……想花が……!」
掠れた声が、苦しげに漏れる。
常闇の手を、彼は振り払おうとした。
ふらついた身体が傾く。
それでも立ち上がろうとするその姿に、常闇は必死で支える。
「……い……か、せろ……!」
けれど、止めきれないと悟ったそのとき。
彼の手が、そっとポケットに触れた。
そして──一つの小さな結晶を、取り出す。
「……これ」
それは、彼女がクリスマスに贈った――想願の結晶。
「……星野から、受け取ったものだ。 あなたなら使い方も分かるだろう」
結晶は手のひらの中で、わずかに光を放っていた。
「……せめてこれを、使ってくれ」
ホークスの手の中に、それがそっと置かれた。
熱に焼かれた指先で、それをそっと握る。
(あの時、これを渡しに──)
(ほんと……どこまで他人思いなんだよ)
誰にも傷ついて欲しくないと──
彼女の願いが、まだこの手の中に残っているなら。
どれだけ身体が焼かれようと、動けなかろうと。
──俺は、まだ飛べる
震える足に、力がこもった。