第24章 想いを、繋ぐために
「……ッ、マキアが……!」
砂藤の声が、震える地鳴りにかき消されかける。
ドグン、ドグン──
地面から響く低い振動が、次第に明確な“歩み”へと変わる。
「あんな傷、負わせたはずなのに……」
八百万が絶望に青ざめる。
ギガントマキアは、憎悪そのもののような顔で立ち上がった。
「蛇空市──」
低く、唸るような声。
──主のもとへ。
それだけを目指し、マキアが一歩を踏み出そうとする。
「……止めろッ!!」
切島が叫び、すぐさま走り出す。
「投げろ!!今だっ!!!」
瀬呂が巻いたテープが支点となり、切島が跳躍。
硬化した右腕に、八百万が作った麻酔液の瓶を握り──
「──喰らえええええええッ!!!!」
全力で、マキアの口腔へと拳ごと突き刺した!!!
──ガシャン!!!
瓶が砕け、液体が勢いよく喉奥に流れ込む。
「ッしゃあああああ!!!!!!」
切島が跳ね返される直前、満身創痍の芦戸が滑り込み──
「まだっ……もう一瓶っ!!!」
彼女が手にした最後の一本を、震える手で追加投下。
──ごぼっ。
マキアが、喉を鳴らした。
飲み込んだ……!
──けれど、次の瞬間。
「…………ガアアアアアアアッッ!!!!!」
巨獣が、咆哮した。
地が裂け、森が燃え、空が震える。
「ッうわああああ!!!!」
その咆哮と共に、マキアは怒りのままに大地を削りながら駆け出す。
手前にいたプロヒーローたちが吹き飛ばされる。
その背中には──
「……想花……ッ!!!」
耳郎が叫ぶ。
風に靡く銀髪、だらりと揺れる細い腕。
Mr.コンプレスが大事そうに抱える少女の姿。
「離せっ……返せっ……!!」
叫んでも届かない。
スピナーが刀を抜き、こちらを牽制する。
トガが無垢な笑みで、口元を拭いながら小さく言う。
「想花ちゃんは、私たちのです」
──それは、酷く静かな拒絶だった。
そしてマキアの巨体は、森を割り、大地を砕き、蛇空市へ向けて疾走する。
「くそっ……! くっそおおおおッ!!」
切島が拳を握り、歯を食いしばる。
八百万が、その場に膝をついた。
芦戸の目からは、止まらない涙。
「ごめん……ごめんね……想花……」
彼女たちは、ただ──その背を見送るしか、なかった。