第24章 想いを、繋ぐために
ヴォイド・主人公side
ノイズだけを返す通信機に、ヴォイドは舌打ちした。
スケプティックとの接続は、いまだ繋がらない。
「……スケプティック様……なんで繋がらない……!」
焦燥の滲んだ声に、隣を並走する想花は何の反応も示さない。
だが、その足取りはどこか不安定で、
まるで目に見えない何かと戦っているようだった。
壁を裂いた衝撃音が、微かに遠くで響く。
戦況は急速に混乱へと傾いていた。
このままでは、どこに誰がいるのかもわからない。
そんな中──
崩れた扉の先、割れたガラス越しに揺れる日差しの下、
ふたりの人影がこちらを向いていた。
がれきの散らばる渡り廊下。
吹きさらしの風が、血と土の匂いを攫っていく。
一人は仮面の男、もう一人はスカートの裾を赤く染めた少女。
Mr.コンプレスと、トガヒミコだった。
トガは、何かを言いたげにこちらを見ていた。
表情には、あの狂気じみた笑みはなかった。
ただ静かに──哀しみと怒りを滲ませていた。
「想花ちゃん……っ」
「……仁くんが……仁くんが殺されたよ」
ヴォイドが思わず足を止めた。
だが、その隣で──
想花の動きが、完全に硬直する。
それまで空虚だった目に、一瞬だけ“感情”の色が戻る。
「ホークスに、やられた」
「信じてたのに……最期まで、私たちの名前、呼んでた」
それは、ただの報告でも、嘲りでもなかった。
仲間を失った者の、本気の悲しみと怒りだった。
その言葉に、想花の肩が震えた。
唇が微かに動いたようにも見えたが、声は出ない。
歩みを止めた彼女の足元に、何かが落ちていた。
小さな、血で濡れたナイフ。
おそらく、トガの落としたものだろう。
それを見た想花の右手が、わずかに動く。
震える指先。
掴んだのは、冷たい刃。
明らかに“自分の意思”による行動だった。
「……おい、なにして──」
ヴォイドがすぐに反応した。
だが、言葉を止めるように、想花の表情が静かに強張っていた。
彼女は何かをしようとしている。
それが、危険な何かであることは、直感でわかった。