第24章 想いを、繋ぐために
ホークス・トゥワイスside
──空気が焦げる。
羽根が風を裂き、爆ぜる音と熱気が満ちる部屋の中。
その中心で、ホークスは一歩、トゥワイスへと歩み出る。
「……何で……っ、何で、ホークス……」
トゥワイスが、震える声で問いかけた。
その瞳には、怒りでも憎しみでもなく、“悲しみ”が滲んでいた。
「オレ……お前のこと、信じてたんだぜ……!」
「仲間だと思ってた……お前も、アイツのことも……!」
“アイツ”──
その名は、口にしなくても互いに分かっていた。
想花。
かつてヒーロー科の制服を着て、戦場ではヒーロー名“ウィルフォース”と呼ばれていた少女。
いま、誰のものでもない戦火の中にいる少女。
「アイツは今でも、オレたちの仲間だろ……!?!」
「たとえ操られてたって、アイツは“こっち側”にいるんだよ!!」
トゥワイスの叫びは、涙と共に空気を裂く。
「……それを……お前が斬るってことは……!」
「アイツを、裏切るってことじゃねぇのかよ……!!」
ホークスは目を伏せなかった。
ただまっすぐ、トゥワイスを見据えて言った。
「……オレは、アイツを裏切らない」
「誰よりも、信じてる」
その言葉は、かすかに揺れていた。
けれど確かに“決意”に満ちていた。
「だからこそ……彼女の手を、血で汚させるわけにはいかないんだ」
「オレの手なら……いくらでも汚していい」
羽根が舞う。
殺意も、情も、すべてを帯びて。
「アイツを、お前たちの元には戻さない。……死んでもな」
「それが……オレが、信じた彼女を“守る”ってことだ」
その瞬間、トゥワイスの表情が崩れる。
悲しみと怒りと、理解しきれない現実。
「違う……違うだろ……!!」
「そんなの、アイツが望んでるわけねぇだろ!!」
「“恋人”だろ!? ……お前、ほんと何も分かってねぇじゃんかよ!!」
トゥワイスが咆哮する。
その姿に、ホークスの眉がわずかに寄った。
──違う。信じてる。誰よりも。
でも信じてるからこそ、引き裂かなくちゃならない。
“お前たち”から、“彼女”を。
そう心で呟きながら──
ホークスは、羽根を解き放つ。
羽根は刃となって、空気を裂き――
トゥワイスの分身が次々に壊れていく。
「ホークス…ッ…!」
その叫びに──
誰よりも近くて遠い、あの少女の影がちらついた。
