第24章 想いを、繋ぐために
(地上・郡訝山荘 正面戦場)
午前の陽が、戦場の空に高く差していた。
轟く爆音、木々を割る衝撃、地を焦がす熱──
ヒーローたちの奇襲により、超上解放戦線の本拠は瞬く間に火の海と化した。
「このまま押し切れッ!」
「突破口を開け──!」
先行部隊を率いるヒーローたちの声が飛び交い、
士気は急激に上昇していく。
不意を突かれた戦士たちは混乱し、防戦一方の状態だった。
だが──その流れが、"ある気配"によって一変する。
誰かが、空気の色が変わったことに気づいた。
音が──遠のいた。
前線中央に、静かに“それ”は現れた。
群れから外れたかのように、一際、異様な存在。
戦場の真ん中に現れたその二人の姿に、超上解放戦線の戦士たちは本能的に道を開ける――無意識に。
少女が歩くたび、地面が淡く、波のように揺れる。
肩に立つ影が、静かに彼女に寄り添い、
誰一人、そこへ手を伸ばそうとはしなかった。
その姿を見た瞬間──ヒーロー側の数人が、息を呑んだ。
「……あれは……ッ」
ミッドナイトの声が震える。
「ウィルフォース……!」
木の上から見下ろしていたシンリンカムイが、目を見開いた。
「雄英の……一年、星野想花だ!」
「なんであんなところに……!」
エッジショットの目が細くなる。
少女は、それらの声に一切反応を示さなかった。
白銀の髪が揺れ、無感情な瞳が、戦場のヒーローたちをゆっくりと捉える。
何も見えていないかのようなその眼差しは、むしろ、誰よりも遠くを見ていた。
そして──
ゴウッ──!!
彼女の両の手に、赤き炎と蒼き風が現れた。
指先から立ち昇る力は、戦場の空気ごと焼き尽くすかのような圧倒的な“存在感”。
ヒーローたちは思わず、一歩、後ずさった。
ミッドナイトが震え声で呟く。
「何が……あの子に……」
全員が感じた。
目の前にいるのは、たしかに“彼女”であるはずなのに、
そこに立っているのは、まるで──
「“兵器”だ……」
誰かが、そう零した。
まさにその瞬間だった。
少女の手が、ヒーローたちに向けて、持ち上がる。
殺意が、来る。
“攻撃の予兆”が、あまりにも明確に伝わってくる。
ヒーローたちの足が、一斉にすくんだ。
その異様さ。
その、美しさと狂気。
──それが、戦場に刻まれた、“最初の恐怖”だった。
